「顔は刺青に似てくる」

「夜桜銀次」とは三代目山口組・石井組舎弟だった平尾国人のことで、全身に夜桜が咲き乱れる刺青をしていたことからそう呼ばれた。その平尾が博多で何者かに射殺され、山口組は250人の組員が大挙して博多に乗り込むことになる。

この事件で正久親分は警官隊と対峙たいじし、一躍その名を知られることになるのだが、当時を振り返って「桜吹雪入れとったら、みな散ってまうぞ」と私たちに言うのだった。

同じ「平尾」だが、胸に生首を入れていたのが平尾ひろし(初代竹中組若頭補佐)だ。竹中組の後継者は「平尾しかいない」と誰もが口をそろえるほどの器量を持った人物である。

竹垣悟『懲役ぶっちゃけ話』(清談社Publico)

平尾の光さんが若頭補佐だった1980(昭和55)年5月、初代竹中組と二代目木下会とのあいだで抗争が起こり、平尾率いる襲撃班が高山雅裕会長を射殺。この「姫路事件」で平尾の光さんは20年の懲役を務めるのだが、私の心に引っかかっているのは彼の刺青だ。

胸元に生首の刺青を彫っていた。その平尾の光さんが「姫路事件」で高山会長の「生首」を取りに行ったのは胸元の生首の刺青と無縁ではなかったと、いまでも思っている。

昔からやくざ社会では、「顔は刺青に似てくる」といわれる。般若を入れると般若のような顔になるし、龍は龍、唐獅子は唐獅子、そして観音さまを背負っている者は慈悲深い表情になる。これは本当に不思議だ。

刑務所で多くの刺青を見たが、背中を見て、前から顔を見れば、(なるほど似ている)と感心したものだ。

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