スマホの使用時間を減らせたら成績も持ち直せる

このように、スマホ等を使用しない、あるいは使用したとしても1時間未満にとどめることができている子どもたちの成績は、2年間で順調に伸びていたのです。反対に、スマホ等を1時間以上使用するようになってしまうと、学力はどんどんと下がっていってしまいました。この結果から、「スマホ等の使用時間が長くなる」と「学力が下がる」の間には明らかな因果関係があることがわかりました。

最後に、下段の線グラフをご覧ください。こちらは、2015年度にスマホ等を「1時間以上」使用していた子どもたち(薄い灰色の棒)の変化を表しています。2年後にスマホ等を「使用しなくなった」(黒色の実線)、または「1時間未満」(濃い灰色の破線)に減らすことができた子どもたちの成績は、持ち直して上昇に転じていました。一方で、そのまま「1時間以上」使い続けてしまった子どもたち(薄い灰色の実線)の成績はさらに下がってしまいました。

この結果は私たちにとって、救いといえるデータとなるかもしれません。なぜなら、一度スマホ等を1時間以上使用するようになってしまったとしても、その後で何とかして使用時間を減らすことができたら、下がってしまった成績を持ち直させることもできる可能性があるからです。

子どもだけでスマホを止め、使用時間を減らすのは困難

追跡調査の結果から、スマホを使えば学力は下がり、やめれば上がるという因果関係があることがはっきりとしました。この中に、私たちがこれから取り組むべき課題が潜んでいると考えています。実は、下段の線グラフでスマホ等の使用をやめられた子どもたち(黒色の実線)はたったの2.9%、1時間未満に減らせた子どもたち(濃い灰色の破線)もわずか10.1%しかいませんでした。

残りの大部分、87.0%の子どもたちはそのまま1時間以上使い続けていたのです。この結果からも、やはりスマホはタバコやお酒、ギャンブルと同じように、一度ハマってしまうとなかなか抜け出すことができない依存性があるといえるでしょう。

写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
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スマホをやめれば成績が上がります。しかし、スマホの「沼」から自分の力で抜け出せる子どもたちは現状で13%しかいません。そのため、いかにして87%の子どもたちを減らし、13%の子どもたちを増やすか、これこそ私たち大人が真剣に取り組んでいく必要がある、教育の課題です。