告発者の声を握り潰すテレビ局の「二枚舌」

ジャニーズ事務所の創設者・ジャニー喜多川氏から複数回の性加害を受けた、と元ジャニーズJr.の男性が「週刊文春」で実名・顔出しで告発してから1カ月が経った。

「計15回はあった」初めての実名・顔出し告発 元ジャニーズJr.岡本カウアン氏が語るジャニー喜多川氏性加害

写真=時事通信フォト
ジャニーズ事務所(=2022年11月8日、東京都港区)

ネットやSNSではこの話題はだいぶ沈静化してきてはいるが、一方でテレビ局に対する人々の「不信感」と「怒り」は日増しに高まってきているように感じる。

いつもは「報道の自由」「権力者の不正を許すな」なんだと立派なご託を並べて、「疑惑」だけボロカスに叩くくせに、それが「身内」となると途端に人が変わったように、「疑惑だけでは報じられない」なんて神妙な顔をして、告発者の声を握り潰しているからだ。

元ジャニーズJr.男性が外国特派員協会で記者会見を催したことで、新聞やNHKはどうにか報道をしたが、民放テレビ局は軒並みスルー。しばらくして事務所が取引先企業に本件に関する説明をした、という報道が出るとようやく重い腰を上げてウェブニュースで触れ、地上波のニュースでも小さく報じたものの、いつもやっている「疑惑」だけで芸能人や政治家をボロカスに叩くお祭り騒ぎとかけ離れている。

このゴマスリ上司のような露骨な二枚舌に、「日本のテレビ局はマジで終わっている」「テレビが報じないことのほうが正しいってことだな」などと厳しい声が上がっているのだ。

“ノーコメント作戦”は完全な悪手である

では、当のテレビ局はこの「危機」にどう対応しているのか。4月28日のフジテレビの港浩一社長が定例記者会見で本件についての見解を問われ、こう答えている。

「一般論として性加害は決して許されないが、事実関係がよく分からないのでコメントは差し控える」

これは「取引先企業」が何か不祥事を起こした時の「常套句」で、表向きは「中立」を装いながら取引先を庇い、社会がこの一件を早く忘れてくれるのを待つという作戦だ。

ただ、報道対策アドバイザーとして同様の不祥事対応の経験もある立場から言わせていただくと、一般企業ならいざ知らず、公共の電波を預かるテレビ局がこのような“ノーコメント作戦”をとるのはかなりの「悪手」だ。

なぜかというと、今回のスキャンダルはそう遠くない未来、再燃して日本中で議論される大問題に発展するからだ。その際、この問題に対して明確に「批判」というフラッグを立てていないテレビ局は、「この卑劣な犯罪を闇に葬り去ろうとした共犯」として大炎上してしまう可能性が高い。