次に②解体費用だ。これは解体費用積立金、原状回復積立金などと呼ばれることがある。定期借地権付きマンションは、将来、更地にして地主に土地を返す必要があるため、住民が費用を負担し建物を解体しなければならない。
そのため毎月支払う解体積立金がある。新築時にまとまった解体費用を支払うケースもある。最近の人手不足、賃金上昇などで物価が上がり、建築費の高騰も指摘されている。解体費用が足りず、毎月の支払額が上がる可能性がある。
定期借地権付きマンションのデメリットとされる地代や解体費用はどのくらいなのだろうか。現在販売中の都内の2つのマンションを見てみよう。
○江東区の361戸のマンション(60年の借地権付き)
専有面積:40.47m2~82.50m2
販売価格:3998万円~7238万円
管理費(月額):6920円~1万4100円(引渡時の管理準備金あり)
修繕積立金(月額):3640円~7420円(引渡時の修繕積立一時金あり)
借地権賃料(地代)(月額):3780円~7710円
原状回復積立金(月額):2140円~4370円
(上記は2023年4月5日現在の先着順販売18戸のもの)
○千代田区の50戸のマンション(70年の借地権付き)
専有面積:45.03m2~135.67m2
販売価格:6380万円~2億7790万円
管理費(月額):7250円~2万1850円(引渡時の管理準備金あり)
修繕積立金(月額):6750円~2万350円(引渡時の修繕積立基金あり)
地代(月額):8332円~2万5098円
解体費用積立金(月額):8770円~2万6420円(引渡時の積立基金あり)
(上記は2023年4月5日現在の最終期先着順販売5戸のもの)
2つのマンションとも専有面積が一番小さい住戸が40平米台なので、それを比較すると、地代、解体(原状回復)積立金とも千代田区の物件が高く、2倍以上の開きがある。総戸数の違い等により定期借地権マンション特有の毎月支出金額は物件による差が大きいということだろう。
定借マンションが直面する想定外の結末
定借マンションと普通のマンションで違いが鮮明になる問題がある。
筆者が最も懸念するのは、マンションのコミュニティ崩壊による住民負担の増大だ。
「借地期間の期限」が近づくと、マンションや住民はどうなるだろうか。比較的新しい制度であるため未知数ではあるが、容易に想像ができる。
当然、通常のマンションと同様に老朽化した建物の修繕が行われるが、次第に所有者の修繕をしようという総意が薄れていく恐れがある。場合によってはスラム化する危険性もある。
借地期間の期限は厄介だ。期限があらかじめ設定されているため、期限が近づくにつれ、マンション購入希望者は物件を忌避することになるだろう。そうなれば、だれでも買ってくれる人に格安で販売することになり、居住環境に不安が生じる。
あるいは、売るに売れない所有者の中には、空き家にして放置する人も現れるかもしれない。法律上所有権は放棄できないので、そうした所有者にも解体費用などの負担義務があるが、支払ってくれるか疑問だ。「逃げるが勝ち」というような状況になれば、住み続けること自体が重大なリスクになりかねない。修繕費用の積立は管理組合の決定によって行うが、合意形成もますます難しくなるだろう。