これでは新たに借地権を設定して土地を貸そうとする地主が極端に減ってしまい、土地の供給が減ってしまう。そこで地主に有利な「定期借地権」が1992年に設けられた(借地借家法)。定期借地権には事業用もあるが、マンションに適用されるのは一般定期借地権で、契約期間は50年以上。最近では70年とする物件も見られる。
一般的に以下のメリットが挙げられることが多い。
①購入価格が2~3割安い
土地の購入費用がないため価格が抑えられる(一般に毎月の地代に加えて初めに借地権の権利金等を払うがこのほうが安い)。同一エリアのマンションに比べて2~3割ほど販売価格が安いケースが多い。よって、同じ予算でより便利なエリアや、一回り広い間取りのマンションを購入できると強調されることが多い。
②好立地に建てられることが多い
地主からすれば、一定期間後には確実に土地が戻ってくるので、先祖代々引き継いできた土地を手放さずに、地代を得ることができる。売却に比べて決断しやすく、好立地のマンションが出やすい。
③土地に対する固定資産税などがかからない
普通のマンション所有者は土地・建物にかかる固定資産税・都市計画税を支払う。定期借地権付きマンションの場合、購入者が納税するのは建物分だけで済む。税金負担が軽くなる。
不動産関連サイトを見てみると、こういったメリットを強調しているものがほとんどだが、もちろん「安いのには理由がある」のだ。比較的新しい制度であることは先に述べたが、年数が経過すれば負の側面が露呈し、消費者問題に発展しかねないと思う。
定期借地権付きマンションの落とし穴
定期借地権付きマンションは、普通のマンションと比べてどのような短所や留意点があるのだろうか。まずはオーソドックスな3つを指摘したい。
①資産価値が低く、売るに売れない事態になり得る
借地期間終了後、建物を取り壊し、土地を更地にして返還しなければならない。そのため中古市場での資産価値は低くなる。定期借地の残存期間が少なくなるにつれて、買い手は少なくなるので価値が下がっていく。都心の好立地であっても購入者が売りたいと思っても売れない「負動産」になる可能性がある。
②住宅ローンの融資額が少なくなる場合がある
住宅ローン審査の対象は不動産の資産価値と借入者の返済能力だが、定期借地権付きマンションの場合、マンションの資産価値が低く評価される場合がある。その場合、担保価値が低く評価され、年収が高くても受けられる住宅ローン融資額が少なくなる恐れがある。
③住宅ローン控除のメリットを受けにくい
定期借地権付きマンションを購入する場合の土地に対する支払いが、賃料前払い方式にあたる場合、その分は住宅ローン控除の対象外となる。また、保証金方式であっても、全額、住宅ローン控除の対象となるわけではなく、一定の計算式に基づいて算出された金額が、土地の取得の対価とみなされる。
普通のマンションにはない支出がある
さらに定期借地権付きマンションには、普通のマンションにはない出費がある。①地代と②解体費用だ。
地代は毎月支払わなければならない。マンション購入価格には借地権を得るための権利金や保証金が含まれている場合はあるが、地代は毎月支払う(購入時に地代を全額前払いするケースを除く)。
地代は一定とは限らない。土地にかかる税金や地価の変動などによって将来増減する場合がある。なお、保証金は契約終了後に土地の借主に返還されるが、権利金は返還されない。