地方移住は正解なのか
若いうちに上京した人などが、年を重ね、老後は地元に帰る。これも昭和や平成の時代にはある種の「常識」として、少なくない事例がありました。
しかし地方への移住の「常識」も、令和の時代には変わりつつあります。近年はのどかな環境で暮らしたいと地方移住を目指す人々が増えており、地方に「Uターン」するだけでなく「Iターン」、つまり地元に戻るのではなく、これまで接点や縁のなかった土地へ移住する人も少なくないようです。増加の背景には新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークする人が増加し、必ずしも「職住接近」が求められなくなったこともあります。
では、地方移住は正解なのでしょうか。
実際に判断する前には、まず地方移住のメリットとデメリットを総合的に検討することが重要です。大前提として知っておかなければならないのは、「住む場所」によって必要となるお金は違ってくるということです。例えば、大都市と地方では生活費が大きく変わってきます。
大都市での消費支出の平均額
総務省の「家計調査」(2021年)によると、単身世帯の1カ月の消費支出は平均で15万5046円となっています。しかし、これを大都市(政令指定都市および東京都区部)に限って見ると、消費支出は15万9473円と全国平均よりも4400円ほど1カ月にかかるお金が高いことが分かります。
地価や物価が高いので当然のように思われますが、大切な老後のお金を考えれば月に4400円、年間で5万2800円ほど平均より多くの生活費が必要になることは知っておかなければなりません。
子供や孫が大都市に住んでいるので近くに住みたい、あるいは同居している、ということであれば、やむを得ないという気持ちも理解できます。
ただ、大都市は商店街が充実しているところが多く、スーパーや百貨店などの近くであれば、買い物のついでに浪費してしまうケースも見られます。健康を考えれば「家に引きこもる」よりも外出したり、散歩したりすることは推奨されますが、買い物の機会が増えれば当然ながら支出も増えてしまうことは頭に入れておく必要があります。