適正住居費のボーダーライン

この他にも持ち家のダウンサイズや実家に戻る、地方に移住するといった選択肢はいろいろとあるでしょう。敷金・礼金がなく、家具なども設置されている高齢者向けシェアハウスに引っ越すといったことも考えられるかもしれません。

有料老人ホームなどの高齢者向け施設も入居一時金や利用料がピンキリです。目玉が飛び出るくらい高額な施設もあります。また、たとえ希望しても健康状態によっては入居できない物件もあるでしょう。

もちろん、好みは人それぞれです。「最後くらい自分の好き勝手に選びたい」という気持ちも理解できます。ただ、重要なことは後悔をしないことです。

退職金を投じて物件を購入したり、大規模なリフォームをしたり、高額な入居一時金を支払ったりして後に「あっ! 生活費が足りなくなってしまった」とならないのかどうか。「やっぱり、気に食わないから前の生活がいい」と言っても、年齢を考えれば元に戻る時間もお金もないかもしれません。

ひとつの目安にしてもらいたいのはやはり適正家賃です。一般的には手取り収入に対して「25~30%」が適正な家賃と言われています。月の年金額が10万円の人ならば、家賃は2万5000~3万円のところに住むといいでしょう。

大事なのは老後破綻を防ぐこと

もし、今の場所がオーバーしていれば、より自分に合ったところへの引っ越しを検討すべきと言えます。物件の購入やリノベーションならば、適正家賃を元に自分はいつまで長く住むことができるのかを計算し、その年数と費用の採算性を確認してみてください。子供に相続するつもりならば、多少のズレも許容範囲です。

大事なことは「老後破綻」を回避すること。持ち家を保有している人は有利と言えますが、賃貸物件に住む人も家賃を抑え、貯蓄・投資に回せば老後資金の足しにもなります。

老後に過剰な「見栄」は必要ありません。立派な自宅を購入したり、建て替えをしたのに、その後すぐに要介護状態となってしまったケースを見たこともあります。何歳まで元気でいられるのか分からない以上、計画的かつ現実的に考える方が無難と言えます。