「終の棲家」はどう選べばいいのか。FP相談サービス執行役員の佐藤健太さんは「なによりも大事なことは老後破綻を回避すること。地方移住した場合は、1人1台の車が必要になるので、年20万~40万円の出費を想定しておく必要がある」という――。(第2回)

※本稿は、佐藤健太『何歳からでも間に合う初めての投資術』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。

家を眺める老夫婦の後ろ姿
写真=iStock.com/twinsterphoto
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「終の棲家」は持ち家か、賃貸か

就職して結婚し、子供が生まれてマイホームを持つ。結婚後、子供夫婦と同居し、マイホームは子供たちが相続する……。そんな「常識」もすっかり過去のものになっています。

こうした状況下で、皆さんは「終の棲家」をどのように考え、決めているでしょうか。持ち家か賃貸か、あるいは老人ホームやシェアハウスで暮らすのか。その判断は老後の生活に大きな影響を与えることになります。

安定した給与がある現役時代はいいかもしれませんが、収入が減少する60代以降はどこで暮らすのかという「次の一手」が大変な意味を持つことになるのです。退職金に手をつけたい気持ちも生じますが、まずは深呼吸して検討を重ねることも必要と言えます。

老後の選択肢の利点と欠点

では、老後の選択肢としてはどのようなものがあるのでしょうか。「終の棲家」として考えられる主な費用、メリット・デメリットをまとめました。

【賃貸マンション】
単身向けマンション(30m2以下):大都市は月4万~9万円
夫婦向けマンション(50m2以下):大都市は月6万~13万円
メリット:自分の好きな物件を選べる。合わなければ引っ越しもできる。
デメリット:引っ越し費用の他、敷金・礼金で家賃の計2カ月分、仲介手数料1カ月分かかる場合も。火災保険料、カギの交換代、更新料も必要。

【UR賃貸物件】
首都圏の物件:50平方メートルで7万~15万円程度
メリット:広めの物件が多い。礼金、仲介手数料、更新料、保証人が不要。
デメリット:最寄り駅から遠く、築年数が古い物件もある。入居審査が厳しい。

【戸建て購入】
新築:3500万円程度
中古:2500万円程度
メリット:家賃が必要な賃貸生活から解放され、相続することもできる。
デメリット:購入時の税金、毎年の固定資産税が必要。大きな支出で老後資金が不足する可能性も。

【自宅建て替え】
建築費用:1500万~2000万円(延べ床面積100m2
メリット:老後も同じ場所に住むことができる。
デメリット:解体費用100万~150万円程度が必要。仮住まいや引っ越しの費用、税金などもかかる。

【二世帯住宅に建て替え】
建築費用:3500万~4500万円程度(延べ床面積約165m2
メリット:老後も同じ場所で、子供と一緒に住むこともできる。
デメリット:解体費用100万~150万円程度が必要。仮住まいや引っ越しの費用、税金などもかかる。

【リノベーション】
費用:築30~40年の戸建ては1000万~2000万円程度
メリット:住み慣れた場所で新鮮な家を満喫することができる。
デメリット:築年数や広さによっては、さらに高額に。

【分譲マンション購入】
新築:4500万円程度
中古:2900万円程度
メリット:毎月の家賃が不要になる。立地によっては資産価値が上昇し、相続もできる。
デメリット:各種の税金を支払う必要がある。立地によっては売却する時に価値が下がる。

【有料老人ホーム】
入居一時金:5万円程度~
月額利用料:8万円程度~
メリット:公的施設は月額8万円程度から利用でき、安心感もある。地方では安いところも。
デメリット:民間施設は利用料が高い。介護付き老人ホームは月額30万円超のケースも。