地方移住の意外な落とし穴

人口15万人未満の都市、地方の町や村に住む場合はどうなのでしょうか。1カ月当たりの消費支出は14万8395円で全国平均より月に6600円ほど、年間にすると7万9800円も低いことが分かります。一言で「地方」と言っても様々ではありますが、大都市と比べれば生活費が少なくなるのは明らかです。

持ち家がなく、子供や孫たちの近くに住まなくてもいい、仕事は住居の近くで選ぶなどの制約がなく、自由に住む場所を選べるのならば、比較的物価が安い地域を選択するのも一案です。

では、年金収入に多くを頼る老後は地方に移住すべきなのでしょうか。結論を先に記せば、私は必ずしもそうであると断言することはできません。

なぜならば、地方に移り住む場合には仕事や地域とのつながりも考えておくことが大切になり、単に「暮らす」だけと思っていたら思わぬ「落とし穴」にはまることがあるからです。

年間20万~40万円もの出費

内閣府の調査によれば、地方圏出身者の20代、30代が地元に戻らない理由として、「コミュニティが狭すぎること」が挙がっています。隣近所との関係が希薄なものとなりがちな都会と比べ、地方では地元住民とのコミュニケーションが大切になります。

近くの職場に働きに出る、あるいは自宅でテレワークする人であっても、付近住民との交流が求められることが多い点は認識しておく必要があるでしょう。専業主婦(夫)がいる家庭は自宅に残る配偶者のことも考えておかなければなりません。

地方ゆえに増える支出もあります。都会での満員電車から解放されるのはうれしいかもしれませんが、地方では買い物に行くにも車が必要となることが多くなります。

1人に1台、ガソリン代や税金、車検費用などを含めれば電車通勤の時と比べて年間20万~40万円もの出費がかさむことになるでしょう。

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また、病気のリスクが高まる老後になれば通院の機会も増加しますが、近くに病院がなければ車を運転して通うことになります。急病でなければまだしも、新型コロナやインフルエンザなどによる高熱、大きなけがをした場合には救急搬送に時間がかかることも考えられます。

たしかに老後は都会の喧騒から離れ、のんびりとした空間で時間を楽しむことに憧れる気持ちは分かります。しかし、退職金をもらって気持ちが大きくなり、「理想」だけを追い求めてしまうと結果的に「失敗だった」と感じることになりかねません。

老後の失敗は取り返しのつかないものとなります。時間に余裕が生まれる老後はしっかりと情報収集し、家族とも今後のライフプランを話し合いながら総合的に検討することが重要と言えます。

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