時間と場所を確保し、1対1で話す

「できれば思い過ごしであってほしい」「深刻な状態であってほしくない」といった気持ちから、こうした軽い声掛けにとどめようとする上司は多いようですが、適切な対応とはいえません。

これでは、一応心配して声を掛けたことにはなるかもしれませんが、もし部下が本当につらい思いをしていても、周りにたくさん人がいるところで「調子が悪いんです」とはなかなか言えません。また、こうしたシチュエーションだと、部下の方は「上司は私に『何でもありません』と言ってほしいんだろうな」と感じてしまうでしょう。もしかすると「五月病」という言葉自体も、調子の悪い人にとっては、軽々しく響くものかもしれません。

ですから、メンタルヘルスの不調が気になる部下と話すときには、そのための「時間」と「場所」を確保し、必ず「1対1」で行ってください。

「最近の仕事の進捗しんちょくについて聞きたいから、○時から30分ほど時間を取れないか? ミーティングルームを予約したから、そこでちょっと話そう」など、周りを気にせず1対1で話せる時間と場所を設定します。

アドバイスや説教はせず、聞き役に徹する

話を切り出すときは、回りくどく聞かず、単刀直入に尋ねましょう。「最近、以前と違って一人でいることが多いし、打ち合わせ中も元気がなくて『あなたらしさ』がないようだ。ミスも目立つようだし、何か気になっていることはない? 体調は大丈夫?」というところから始めましょう。

そして、聞き役に徹してください。「気分転換をしたら?」などとアドバイスをしたり、「これくらいで調子を崩すようでは、これから忙しくなるのにやっていけないよ」などと説教をしたりしてはいけません。しっかりと話を聞いたうえで、一人で抱え込まず、社内のメンタルヘルスに対応している部署、たとえば総務部や人事部、産業医などにつなげましょう。

結果的に勘違いだったり、別の理由があったなら、それがわかるだけでも大きなプラスです。部下にとっても「それだけ自分のことを気にかけてくれているのだな」ということがわかって安心するはずです。もし今後、メンタルヘルスの不調に陥ったときにも、相談しやすくなるでしょう。