政権批判でシベリアの刑務所へ送られたケースも
【池上】プーチンが大統領に就任すると、政権に反対的なオリガルヒへの弾圧が始まりました。脱税などの罪で次々に捕まえていったんです。身の危険を感じて、海外に逃亡するオリガルヒも出てきました。エリツィン時代はわが世の春だったのに、プーチン大統領の言うことを聞かなかったためにシベリアの刑務所へ送られたオリガルヒもいます。
プーチン大統領の支持基盤には、元KGBや軍出身者から構成される勢力があります。彼らは「シロビキ」と呼ばれます。プーチン大統領は、言うことを聞かないオリガルヒを弾圧して、国営企業のトップにこういった仲間を据えたりもしました。結果として、プーチンの言うことを聞く体制派のオリガルヒが生き残ったわけです。
【増田】オリガルヒは、現在200人くらいいるそうですね。プーチン大統領に影響力をもつこの人たちが反対すれば、侵攻が早く終わるのではないかという期待もありました。
【池上】ウクライナへの侵攻に対して、西側諸国はロシアに経済制裁を科しました。その中にオリガルヒに対する制裁も含まれているので、彼らは莫大な損失を被っています。そのため、デリパスカ氏のようにプーチン大統領を批判したり、距離を置くオリガルヒが出てきたのは事実です。
批判派のオリガルヒでは「自宅で一家心中」が続発
【池上】ニューヨークに拠点を移しているオリガルヒのアレックス・コナニキン氏は今年3月、「ロシアおよび国際法にのっとり、プーチンを戦争犯罪者として捕らえた人に100万ドルを支払う」とフェイスブックに投稿しました。
有名な起業家のオレグ・ティンコフ氏も、4月に「正気ではないこの戦争には1人の受益者もいない! 罪のない人々や兵士が死んでいる」「親愛なる『西側のみなさん』、プーチン氏に面目を保つための明確な出口を与え、この大虐殺を止めてください。もっと理性的、人道的になってください」とインスタグラムに書き込んでいます。
一方で相次いでいるのが、オリガルヒの不審死です。
▼2022年に死亡が報じられたオリガルヒの代表例
・1月29日、投資会社ガスプロム・インベスト幹部のレオニド・シュルマン氏(浴室で遺体で発見)
・2月25日、国営ガス会社ガスプロム幹部のアレクサンドル・チュリャコフ氏(自宅ガレージで遺体で発見)
・3月23日、医薬品会社メドストムの元幹部ワシーリー・メルニコフ氏(自宅で妻・子ども2人と遺体で発見)
・4月18日、大手銀行ガスプロムバンク元副社長ウラジスラフ・アバエフ氏(銃を握った状態で妻・娘も遺体で発見。無理心中か)
・4月19日、天然ガス大手ノバテク元副会長セルゲイ・プロトセーニャ氏(スペインのリゾート地で首つり。妻・娘も遺体で発見。無理心中か)
・5月1日、レストランチェーン「カラバエフ兄弟の料理店」共同創業者、ウラジーミル・リャキシェフ氏(自宅で銃で撃たれ死亡。拳銃自殺か。妻が発見)
・5月8日、石油会社ルクオイルの元トップ・マネジャー、アレクサンドル・スボチン氏(霊媒師宅の地下室で遺体で発見。急性心不全)
各種報道をもとに編集部作成