“禁じ手”に手を染めた財務省
保険料をとる段階で、どのくらいの人が亡くなり、どのくらいの人が病気になって、どのくらいの人が長生きしているかが分かる。
人口統計は充実しているので、生命表が作れる。生命表とは、ある期間における死亡状況(年齢別死亡率)が今後変化しないと仮定したとき、各年齢の者が1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるかという期待値などを、死亡率や平均余命などの指標(生命関数)によって表したものだ。これにより保険運営は、より安定させられる。
給付と負担を明らかにするのが、保険の大前提だ。だから、保険の運営を保険料以外の何か、つまり税に頼ってはいけない。つまり禁じ手だ。
まことに恥ずかしい話だが、これを日本はやってしまった。財務官僚が狡猾に政府を騙したのである。
隙あらば増税したがる財務省
いったん騙してしまえば、あとは赤子の手をひねるようなものだ。
「消費税を減税してもいいですけど、社会保障の運営が厳しくなりますよ。それでもよろしいですか?」
と言われれば、政府が消費税減税に動くのは難しい。
増税したい財務省にとって、減税などもってのほかだ。
消費税は上がり続けるばかりで、景気が悪くなっても、「社会保障」を人質に取られ、政府は下げることができない。
財務省は非常にうまくやったのである。
悲しむべきことに、こうして我が国は、すでに20年以上継続して消費税を社会保障目的税にしてきてしまった。
これは「ごめんなさい」で済む問題ではない。
もちろん、制度として間違っているのだから正すべきだと私は思う。変えなければ、社会保障制度の運営を間違える危険性をはらんでいる。
もし政府自らこの間違いを認めれば、政権が倒れかねない大事になる。だから政治家には期待できないだろう。
財務省というのは、とにかく隙あらば増税したくてウズウズしている人間の集団だと考えてほしい。年がら年中、増税のチャンスをうかがっている。早く増税しないと自分の出番がなくなってしまうと焦っている。
彼らにとって、増税を実現することこそ成果であり、手柄、勲章なのである。
税収を上げる方法は増税だけではない
財務省が、大変嘆かわしいことだが、「増税だけが勲章になる組織」だという話をしてきた。
しかしそう言うと、
「日本の財政は大変な状況なのだから、増税もやむを得ないのではないか」
という、物分かりの良すぎる意見が噴出するかもしれない。
あるいは、そういうコメンテーターの声を聴くかもしれない。
はっきりここで否定しておこう。
税収を上げる方法は、税率アップだけではない。私は、漏れなく公平に税を徴収できるようにするためにはどうするかを考えるべきだと思う。