一番迷惑なのは「休日の料理」

この話をしてくれた母親が一番「迷惑」というのは、「休日の料理」だという。

普段働いている父親は、平日の料理をするのは難しいが、休日は精を出して料理をしてくれる。確かに出産前から時々料理をしてくれ、その腕は決して悪くないし、嬉しかったという。しかし産後はそれを「迷惑」と感じることが増えてしまった。

平野翔大『ポストイクメンの男性育児 妊娠初期から始まる育業のススメ』(中公新書ラクレ)

ここに母親の大きな思考の変化が隠れている。出産後、子どもを抱えながらの家事は基本的に時間との戦いになる。子どもが泣いたりすればそちらの対応に時間を取られるので、基本的な家事スタイルは「省エネ」。料理や洗い物も、可能な限り手間がかからないように進める。

しかし父親の料理は以前と変わらない。味付けや見た目にも気を配り、一見「手の込んだ」料理で家事熱心な父親に見えるだろう。しかし手の込んだ料理はその分、使う道具も増えるし、後片付けも大変になる。

以前より省エネを意識するようになった母親にとっては、これが「無駄が多い」と見えてしまう。決して多くない頻度の料理のために食材・調味料や調理器具が増えたら、言葉を選ばずに言えば「邪魔」なのである。結局、母親にとっては「作業や手間が増える」だけだし、同時に「自分の手抜き」に対する劣等感のようなものも感じてしまうことになる。もちろん、父親が料理をする間の子どもの世話は母親がやっている。

それなら、「その時間に子どもを見て休ませてくれたらな」と思うのだそうだ。

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