総合商社が果たす役割はいっそう増える

例えば、近年、総合商社は脱炭素関連の事業に商機を見出している。その一つとして、洋上風力発電など再生可能エネルギーを用いた発電プロジェクトへの投資が積み増されている。一方、石炭採掘関連のプロジェクトなどは縮小され始めた。天然ガス関連の分野では採掘などから排出される二酸化炭素を地中に貯留したり、ガス田に貯留したガスを注入して生産性を高めたりする技術への投資も行われている。

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中長期的に世界経済における総合商社の優位性は高まる可能性が高い。特に、足許の世界経済では、台湾問題の緊迫感の高まりなどを背景に、サプライチェーンの再編が加速している。一方、IT先端分野ではSNSなどソフトウェア開発が牽引したビジネスモデルの優位性が行き詰まり始めた。

スマートフォンなどデジタル化を支えたデバイスの需要も減少している。脱炭素、人工知能(AI)利用など世界経済の成長には、新しいハードウェア(最終製品)の創造が欠かせない。その分野で、わが国には素材や精密な工作機械など、高度な製造技術を持つ企業が多い。そうした技術と海外の潜在的ニーズをつなげるという点でも、総合商社が果たす役割は増えるだろう。

バフェット氏が狙っているタイミングとは

バフェット氏は、中期的な景気回復による総合商社が発揮する需要創出、それに伴う業績回復、そして株価の上昇を狙っているだろう。短期的に世界経済のさらなる減速や後退の懸念は高まりやすい。

3月、米国では2つの中堅銀行が破綻した。欧州ではクレディスイスが救済買収された。また、世界的に原油価格は上昇し始め、米国では消費者のインフレ予想が再度上昇し始めた。中国経済は徐々に持ち直してはいるものの、コロナ禍が発生する以前のような成長の勢いは見られない。連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は慎重に金融引き締めを継続し、インフレ鎮静化に取り組むだろう。

米国などでは商業用不動産の価格が下落し、資金繰りに窮する投資ファンドも出始めた。世界経済は景気の谷に向かい、幾分か総合商社の業績が下押しされる可能性はある。ただ、中期的には、どこかのタイミングで景気は底を打ち、徐々に回復するはずだ。その過程で総合商社の業績は回復、拡大するだろう。