バフェット氏が得意とするバリュー株投資

中でも、5大商社のPERは低位に安定してきた。加えて、三菱商事の場合、株価を一株当たりの純資産で割った数値〔株価純資産倍率(PBR)〕は1.00を下回っている。つまり、株価は、今すぐに企業が解散した場合に株主が受け取ることができると考えられる価値を下回っている。個別企業ごとに差はあるが、PBRから見ても総合商社株には割安感がある。

過去、バフェット氏はこうした割安感の高い株を購入し、長期にわたって保有して莫大な富を手に入れた。そうした投資のスタイルをバリュー株投資という。なおかつ、バフェット氏は強いブランド競争力を持つなど事業運営面の優位性も重視する。

バフェット氏が保有する銘柄の代表の一つに、米国のコカ・コーラがある。コカ・コーラは世界でおなじみの清涼飲料水だ。老若男女、先進国、新興国を問わず、人気は高い。高い競争力は潤沢なキャッシュフローの創出を支える。IT先端企業のような派手さはないものの、ビジネスモデルは堅実、かつシンプルでわかりやすい。そうした銘柄をバフェット氏は選好してきた。

世界にはない「総合商社」の優位性を評価している

総合商社という事業運営の形態(ビジネスモデル)は他の国には見当たらない、わが国独自のものだ。総合商社のビジネスモデルは世界経済の変化に迅速に対応する機動力を持つ。ある意味では、世界経済の環境変化にしなやかに対応し、いち早く収益を得る。それは、わが国総合商社の大きな特徴だ。そうした優位性に着目し、バフェット氏は各社の株式を積み増した。バフェット氏は各社との連携にも前向きな考えを示している。

総合商社の事業領域は非常に広い。繊維やアパレル関連などから石油、鉄鉱石、航空機や半導体、医療機器、さらには食料など、第1次産業から第3次産業までを幅広くカバーしている。各社は世界に情報網を張り巡らし、内外の経済、社会の変化などを機敏にとらえる。その上で、成長期待が高く、自社の強みが発揮できる分野に迅速に“ヒト、モノ、カネ”を再配分して収益を得る。