さもしくアクセスを稼ごうとする姿勢が日本礼賛記事を生む
チェコ代表は「日本アゲ」のムードづくりのためにテイよく利用されたようなもの。それらの記事を具体的に紹介するのもバカらしいし、コタツ記事のアクセス稼ぎに手を貸すのも腹立たしいので、あくまでサンプルとして、架空の記事タイトルを3つ作成してみた。ここからニュアンスを感じ取っていただきたい。
【1】WBCチェコ代表選手、日本代表と対戦し「グレート過ぎる体験だ。日本ありがとう」
【2】WBC取材の米国記者、「日本は完璧な主催国である。感服した」 コンビニおにぎりと高級焼肉店の弁当、トイレにも感激
【3】日本のファンは「世界一偉大だ」 WBC取材の米記者とチェコ代表が謝意を示す
ネットの記事づくり、とりわけ時事ネタや瞬間的なトレンドを扱うニュース記事は、“空気をつぶさに読んで、好機と見たら即実行”の姿勢が不可欠になる。そのため「この傾向、論調のコンテンツがPVを稼げる」と編集者やライターが判断したら、一気にその方向に突っ走り、各メディアがわれ先に記事を掲載していく。合わせて、いかに早く関連ネタを見つけて記事を量産するかも勝敗をわけるポイントになる。
日本をホメる外国人記者をひとたび把握しようものなら、その人物のSNSを逐一チェック。弁当やトイレをホメたらすぐに記事化していく(実際は「記事」というのもはばかられるような、お粗末な内容のものも多いが)。これを「Yahoo!ニュース」をはじめとしたポータルサイトにも配信し、アクセス増を目指すのだ。要するに「日本礼賛記事のような、読者が気持ちよくなるコンテンツをどれだけ早く、量産できるか」が勝負の肝なのである。
日本は過ごしやすい、よい国。それは否定しないが…
まぁ、こうした日本礼賛記事が横行してしまうのも、わからなくはない。結局は「読者がそれを求めている」ということなのだから。
たしかに、日本はすごい国である。人々はそれなりに穏やかだし、「おもてなし」の精神を備えた人も少なくない。困っている様子の人を見かけたら「どうしましたか?」と声をかけ、助けようとする場面もわりと多い。エレベーターでは「開」ボタンを押して他人がスムーズに出入りできるようにする。駅のホームでも整然と並んで、できる限り“押し合いへし合い”状況に陥らないよう皆が心がける。
大したものだ。店は総じて清潔に保たれているし、観光地やテーマパーク、レジ待ちの行列などで割り込みをするような人もほぼいない。電車は定刻どおりに到着して、1分でも遅れようものなら車掌が謝罪をする。スーパーに並べられた商品は見事なまでに品質が保たれており、不格好な野菜などはまず見つからない。肉や魚介類の下処理も丁寧だし、総菜は多種多様で選ぶのが大変なほど。ガソリンスタンドでは丁寧に窓を拭いてもらえるし、カーディーラーへ行こうものならば、従業員は客の姿が見えなくなるまでずっとお辞儀をしてくれたりもする。