楽天がやることには、やっぱり影響力がある

――そして2022年、楽天のロゴマークの半分をグラデーションでグリーンにした25周年記念ロゴが発表されました。1月に行われた楽天市場の出店者向けカンファレンスでもお披露目されましたね。地球環境保護、エコプロジェクトに力を入れていく、と。

【三木谷】やはりこれは、世界中のあらゆる人が捉えるべき課題だとずっと思っていました。個人としても、ビジネスとしても捉えないといけない、と。改めて思ったのは、どうせやらなくちゃいけないんだったら、リーダーになろう、ということです。

楽天モバイルの立ち上げで、400人が一斉に異動して基地局をどんどん一気に建てていったくらいの気合いを持ってやれば、それもできるんじゃないか、と。

だから、まずは旗を立てたということです。緑の旗です。当然まずは社内から。楽天の全体的なエコシステムであったり、あるいは楽天に出てくる商品であったり、ホテルであったり、移動手段であったり、すべてのものにグリーンの旗を立てていく。それが、実業家としてのミッションだということです。

もちろん、いきなり来年からオールグリーンで、なんてことは無理ですよ。でも、10年かけてやろう、と。真剣に。そのための仕組みが必要だったということ。例えば、3カ月に1回、グリーン朝会をやる。それぞれの事業部が10年計画を立て、どんな進捗なのか報告してもらう。また例えば、楽天市場の出店者でカーボンニュートラルが実現されているとしたら、グリーンバッジを店舗につけるとか。

楽天はここまでの規模になったわけですから、やっぱり影響力があるんです。だから、象徴的なことをやる意味があると思っています。

大学を卒業してから、「五月病」になったことがあった

――それにしても、わずか25年でどうしてここまで楽天は大きくなれたのでしょうか?

出典=Rakuten.Today

【三木谷】大きくなったらいいというものではないと思いますが、やっぱり夢とビジョンがあるからだと思います。それにみんながついてきてくれた。

楽天のブランドコンセプトに、「大義名分」「品性高潔」「用意周到」「信念不抜」「一致団結」の5つを掲げていますが、やっぱりこれなんだと思っています。実際、この通りにやってきたし、世の中にとって正しいと信じていることは誰に対してでも僕は言ってきましたしね。

声を上げないといけないときには、医薬品のネット販売だって、送料無料ラインの共通化だって、思い切り声を上げてきた。それは、そっちのほうが、最終的にはみんなにとってプラスだと思ったからです。本質論で突き進むことは、とても大事なことです。

学生時代、テニス部のキャプテンになって、新入生の球拾いを廃止したことがありましたが、それと同じです。球拾いやって、うまくなりますか、テニスが。ちゃんと本質的に考えないままで進むと、こういうことが当たり前になっていくんです。誰も考えない先に待っているのは、やっぱり停滞だと思うんですよ。

大事なことは、何のためなのか、ということです。原点に立ち戻る。実は大学を卒業して5月になって、僕はいわゆる五月病になったことがあったんです。学生時代、とにかくアグレッシブに熱く生きてきたのに、いきなり暗くやる気もなくしてしまった。

理由ははっきりしていました。何のために働くのか、わからなくなってしまったからです。日本を元気にしよう、日本の金融をリードして日本を作っていこうと思って興銀に入った。でも、自分の仕事がどこにつながっているのかが、見えなくなってしまった。ようやくモチベーションを上げられたのは、留学をして世界をリードするビジネスパーソンになるんだ、という目標が見つかってからでした。