「ちむどんどん」のあまりの悪評ぶりに興味を感じてか、同話終了後にFLASH誌が20歳以上の女性を対象に、過去20作品についての人気度(実際は不人気度)をアンケート調査で調べたデータがある。これを基に図表3に各話の人気度と視聴率の相関図を描いてみた。

これを見ると、不人気度と視聴率はおおまかには右下がりに相関しているものの、相関度はそんなに高いわけではないことがうかがえる。確かに「ちむどんどん」は最悪の評判であり、視聴率も最低であり、その点で相関が感じられる図となっているが、上で述べた通り、「ちむどんどん」の低視聴率はむしろ最近の低迷ぶりを反映しているに過ぎない側面が大きいのである。その証拠に「舞いあがれ!」は「ちむどんどん」ほど不評ではなかったのに、視聴率はむしろ低下しているのである。

高評価の「あまちゃん」だが視聴率は高くなかった

視聴率と人気度が比例していない番組の先行事例が、実は、2013年前半に放映された「あまちゃん」である。放映中、列島各地にブームを引き起こし、国民の関心事として絶大な人気を誇った「あまちゃん」であるが、視聴率的には、まったく目立ったところがなかったことは図表2を見ても明らかである。前作の「純と愛」が低かったので、高い視聴率のように見えていたが、その1つ前の「梅ちゃん先生」や次作の杏主演の「ごちそうさん」よりも低い視聴率だったのである。

NHK放送文化研究所では、ブームと視聴率が比例していなかった謎を解明するため、「放送研究と調査」2014年3月号で独自調査を実施した結果の記事「朝ドラ『あまちゃん』はどう見られたか~4つの調査を通して探る視聴のひろがりと視聴熱~」を掲載した。

NHK関係者は視聴率の低さについて「あまちゃんは、今まで朝ドラを見ていなかった若い人たちに人気があった。より早い時間に家を出る世代がBSで見ていたのだろう」と言っていたが、この記事では、時間帯別の世帯視聴率や男女年齢別の個人視聴率を、あまちゃん以前あるいは以後の年度前半番組と比較して分析した結果、あまちゃんブームは、マスコミ報道やインターネットなど、視聴率とは別のところで盛り上がっただけだという結論に達している。

「ソーシャル・リスニング調査でTwitter上の発言を具体的にみてみた:発言数は日を追うごとに合計約650万件で、前年同時期朝ドラ「梅ちゃん先生」の約12倍に達した。1%の人(アカウント)が全発言数の4割を発信しており『あまちゃん』に非常に高い“熱”を持つ一部の人が全体のツイートを牽引していたようである」。しかし、「国民全体からみるとSNS参加者はごくごく少数であり、その少数者の発言が大きなブームや話題性をどうやって形成していくのかについては、今回は十分には解明できなかった」(同2014年3月号)としている。

当時と比較してSNS参加者は格段に増えている。したがって、「ちむどんどん」が案外低視聴率ではなかったのも視聴率とは別のところで不評が増幅されただけであり、「あまちゃん」とはまったく裏返しの事態が起こったためと考えられよう。

テレビの番組で起こっている限りでは大きな社会的問題とはならないが、現実についてのプラス、マイナスの評価や判断を一部の「熱心者」が過剰に増幅してやりあい、それを報道機関が偏って取り上げる状況が、大統領選挙で起こっている米国や韓国では、SNSが民主主義にとって大きな脅威となると考えられてもおかしくない。