近年、せいぜい20%前後、最近は15%台の朝ドラ視聴率であるのと比較すると、毎日平均して半分前後の世帯がそろいもそろってNHKの朝ドラを見ていた時代があるとは想像するだけでも隔世の感が否めない。

視聴率は1980年代後半のバブル時代から低下傾向となり、2009年には13.7%にまで低下した。生活が豊かになり、家族そろって行動する時代から各人が多様な関心をもつ個性化の時代となり、家族で朝食時、NHKの朝ドラを決まって見るという習慣も衰えていったことがこうしたデータの推移から如実にうかがい知ることができよう。タイトル名を見るだけで、家族とともにそれらを鑑賞していた子どもの頃を思い出すことができる人も多かろう。

こうした視聴率の長期低下傾向についてのコラムニストの堀井憲一郎氏のうがった見方を次に紹介しておこう。

「連続テレビ小説が描いているのは、女の半生である。視聴率が高かった時代、何を見ていたかというと。戦争の苦労である。……視聴率が決定的に落ちるのは、戦争を描かなくなってからである。そのかわり、主人公の女性にいろいろな無理な職業に就かせて、社会と戦わせて、共感を得られなくなり、どんどん落ちていった。……「あんな戦争はいやだ」という一点だけを強く主張し、その後、女性政党となった社会党の凋落と同じである」(『若者殺しの時代』講談社現代新書、2006年)

案外、当たっていると私は思う。

手を変え品を変えても低空飛行を続くNHK朝ドラ

以上は年平均の値で見てきたが、やはり年の前半と後半の視聴率が気になるので、放映時間が朝8:15から8:00に早まった2010年以降の各話のデータを図表2に掲げた。各話の内容を思い出しやすいように括弧書きで主演俳優の名前も記しておいた。

【図表】NHK朝ドラ:タイトルごとの差は縮まり、 年ごとに安定的な(?)低下傾向

これを見ると、かつては、2012年後半の「純と愛」や2015年前半の「まれ」のように前後の作品と比較して大きく視聴率が落ち込むといった変動がかなりあった。ところが、最近はもともと視聴率の水準が低下してきていることに加え、各話ごとの値もそれほど変動しなくなっている。

あれほど不評だった「ちむどんどん」についても、それほど大きく視聴率が落ち込んでいたわけではない点が印象的である。「ちむどんどん」の1つ前の「カムカムエヴリバディ」がラジオ英語講座と3世代女性の100年のファミリーヒストリーを描くため、3人の主演女優を配し、視聴者を飽きさせないよう工夫した作品であり、そのため多少、期間平均視聴率が高くなっているので、それを考慮すると「ちむどんどん」の視聴率はほとんど前話と比較して同水準だったといってもよい。