「フキハラ」被害の理不尽な実態
「フキハラ」の被害者が深刻なダメージを受けている一方で、自覚なき加害者のほうはあっさりとストレスから解放されるということもあるようです。
データ20は、頼んでおいた荷物が届かないことにイライラしている学生Iとたまたまその場に居合わせた学生Jの「ストレス度」を示す脳波の移り変わりです。なお、測定は10分間行いました。
測定開始早々から学生Iの不機嫌が学生Jにうつっているのは明らかですが、5分くらいたったあたりから、学生Iの「ストレス度」を示す脳波は徐々に治まっていきます。
実は、間違って別の部屋に届けられていた荷物がIの元に届いたのが3分後でした。つまり、待っていた荷物が無事届いたことで、Iの「ストレス」は解消されたのです。
ところが、Iの不機嫌に巻き込まれたほうのJのストレス度を示す脳波は一向に治まる気配がありません。「不機嫌ノーラ」の発信者の機嫌が直ったにもかかわらず、「フキハラ」の被害者の感情はネガティブなままなのです。
何の罪もない「フキハラ」の被害者のほうが、結果として「ネガティブな感情」を引きずりやすいとは、あまりにも理不尽だと思いますが、このような現象は実際に起きているのです。
なぜ、「フキハラ」の被害者のほうばかりが「ネガティブな感情」を引きずるのか、その理由については想像するしかありませんが、被害者はいわば「もらい事故」のような形でストレスを受けているぶん、自分のストレスに気づきにくく、そのせいで、ストレスを解消するための行動を起こしにくい、ということがあるのかもしれません。
だとすれば、「不機嫌な人のそばにただいるだけでもストレスが高まる」という事実を知っておくことは、自分自身のストレスコントロールのためにも必要だと言えるでしょう。