雪の下にはロシア軍がばらまいたバタフライ地雷が

ルハンシク州の西隣にあるハルキウ州のカミヤンカ村は、高い丘の上に位置するため、ロシア軍に占拠されて砲兵陣地にされていた。ロシア軍の撤退後、私が訪ねたときは、弾薬箱が周辺に多数置き去りにされていた。

カミヤンカ村の一帯は雪に覆われており、やたらに歩き回るのは危険だ。アフガニスタン侵攻で旧ソ連軍が使用した「バタフライ地雷(PFM-1)」を、ロシア軍が空中からばらまいていったのだ。羽がついたような形状から、そう呼ばれるらしい。

小型だが、踏むと膝から下くらいは吹き飛ばされる。その上に雪が降り積もっているからやっかいなのだ。実際にそれを踏んで、脚を失った住民も出ている。クルマで移動するときも道の真ん中を走らないと危ないから、なるべく前のクルマが走った轍をたどって移動していた。

撮影=佐藤和孝
2023年2月19日、バタフライ地雷で脚を失ったウクライナの男性

ロシアはドネツク州全体を支配しているわけではない

ロシア軍とウクライナ軍の戦闘がいまだ継続中の、ドネツク州バフムートにも行った。小さな市で、戦略的にさほど重要だとは思えない位置にあるが、半年にわたって戦いが続いている。なぜロシア軍もウクライナ軍もバフムートにこだわるのかわからないのだが、われわれにはわからないよほどな政治的意味合いがあるのだろう。

しかしロシア側からみれば、ここを取ってもドネツク州全体を支配できるわけではない。2014年に一方的に実効支配して建国した「ドネツク人民共和国」は、あくまでドネツク州の4割ほどを押さえているに過ぎない。

バフムートを守っていたウクライナのある兵士が言っていた。

「ロシアは戦力も人的資源も投入し、6カ月も戦ってバフムートすら取れていない。どうやってドネツク全部を奪うつもりなのか」

彼はベラルーシからの義勇兵である。

ベラルーシはロシア寄りの国家だが、独裁者ルカシェンコ大統領に対し、民主化を求めて敵対する勢力も多い。義勇兵とはいっても傭兵的な扱いではなく、ウクライナ正規軍に組み込まれ、給料も出ているという。ベラルーシ人でも、大義がどちらにあるかをわかっている人はウクライナ軍に身を投じている。