あまりに熾烈すぎる政界の権力闘争

とはいえ、派閥の維持は決して容易ではありません。派閥内の調整や派閥メンバーの面倒見の大変さはもちろんのこと、他派閥との激しい権力闘争があります。ボスとしては、自分の人間関係力でもって派閥の求心力を高めつつ、自分に挑戦してくる者は徹底的に挫く。

こうして派閥の力を最大限に高めた末に、自ら総理総裁のポストを獲得するか、または自派から総理総裁を輩出して、派閥メンバーを閣僚などの重要ポストにつけることをめざします。

それこそが派閥を維持する目的であり、権力闘争に絶対に勝たなくてはいけない理由なのです。

逆に、派閥間権力闘争に負ければ、勝ったほうは当然こちらを冷遇します。挑む気力を奪うために、ときに自派から大臣を1人も指名してもらえないという場合もあります。

つまり、権力闘争に負けることは、政治家生命を失いかねない事態を招くことになる。政界の権力闘争は僕も体験しましたが、企業の派閥争いがままごとに思えてくるくらい、熾烈なものです。

派閥のボスには、派閥内をきっちりまとめあげつつ、他派閥とも手を結び、ときには派閥間の闘争を戦い抜き、そして最終的には勝ち抜いていくほどの人間関係力が求められるということです。

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野党が強くならない根本理由

政党として長い歴史をもち、また政権与党の座に戦後相当な期間就いていた自民党では、派閥政治というものが確立されています。かつてほどの派閥政治ではないにせよ、その体質は今も残っています。

外から見れば「金と権力にまみれた汚い世界」に見えても、派閥政治が日本の政治において一定の機能を果たしているというのは、すでに述べた通りです。

さらに調整力や交渉力、あるいは敵対勢力との闘争力などといった人間関係力の高い政治家が育つ訓練場になっている点は、決してあなどれません。

金権政治の元凶となっていたかつての派閥政治は改めるべきです。政治資金規正法の施行や衆議院における小選挙区制が導入されたことにより、派閥の金権体質はだいぶ改善され、派閥の力も以前より弱まったと思います。

しかし自民党のまとめる力・まとまる力の源泉に派閥というものがどっしりと腰を据えていることも厳然たる事実です。そこを見逃してはいけません。

では、野党はどうでしょうか。自民党に比べると政党としての歴史も与党としての経験も浅い党内には、派閥政治という風土が醸成されていません。

だから比較的クリーンな党運営ができているともいえますが、その代償というべきか、「派閥で揉まれて人間関係力の高い政治家が育つ」というのが起こりにくいのも事実です。

そしてこのことが、野党のまとめる力・まとまる力が強くならない最大の原因で、野党が強くならない理由なのです。