日本の女性たちの心の叫び

いたってマイペースにハワイで暮らす私のところに、アートファンではない、ふつうの主婦やOLさんから「絵を買いたいんです」という連絡が来るようになりました。どうやら長年の友人のメイクアップアーティストの早坂香須子さんが、いろいろなメディアで私の作品を紹介してくれていたようで、多くが早坂さんの記事を見て連絡くださった方でした。

山崎さんの作品。「1000年後の未来の風景」をテーマに制作を続ける。(写真提供=筆者)

最初は「絵が欲しいんです」「どうやったら買えますか」といったメッセージでしたが、やりとりするうちに「話し相手がいない」「人に会いたくない」「体の具合が悪い」といった深刻な人生相談のようなメッセージが届くようになりました。「死にたい」とはっきり書いてあるわけではないけれど「さようなら」といった、におわせるメッセージも。一人で頑張って我慢して、これ以上どうしたらいいのかわからない……。日本の女性たちの心の叫びが聞こえてくるようでした。世の中で成功しているとされている人たちの中にもそのように心が疲れた人は見受けられるのです。

自分に正直に生きていないのではないか

私の今の暮らしというのは、玄関を一歩出たら、草花が生えていて、フルーツの実る木があって、動物もたくさんいる。すぐそばを野生のシカの群れが走っていたり、海ではクジラが跳ねたりして、暮らしが自然そのものです。

写真提供=筆者
写真提供=筆者
山崎さんの住まいから見える風景

しかし私も東京で生まれ育ち、東京で働いていたので、都会の暮らしというものはわかります。だからこそ思うのは、彼女たちは自分に正直に生きていないのではないかということです。自分の正直な気持ちよりも社会や会社から求められる生き方を無意識にしてしまっている。それが知らず知らずのうちにストレスになって、もう生きていられないとなっている気がするんです。

メッセージをくださる方は「美弥子さんの描いている海と空の風景を見てみたい」と言います。でもよく考えてみてください。海と空は全部つながっています。そして私が見ている空とその女性たちが見ている空もまた、同じ空でつながっているんです。

誰一人自分を助けてくれる人がいなくても、この空というのは、いつも美しく、あなたのことを見守っているよ。そう伝えると、はっとする人が多いですね。そして「空を見上げることが多くなりました、すごくきれいです」「安心できます」と言ってくれる人もいます。

美しい自然は、どこか遠くにあるものではなく、実は自分のすぐそばにあることに気づけるのです。