離婚後に覚醒剤の売人に惚れ自分も注射を打った

40代になり、友達の紹介で知り合った人が覚醒剤の売人やったんです。最初は知らなかった。でも、賭博をやってはったから、すぐわかりました。売人とわかった後でも別れんかったのは、まあ、惚れてたってことですよね。

クスリは好奇心から自分でもやりました。自分で注射を打つんです。怖いというよりは好奇心で。打つと、やっぱり気が晴れるというかね、嫌なことを何もかも忘れられる。どっぷりつかってしまいました。で、クスリが切れてきたらしんどいからまたやる。切れてくると何をするのも嫌になり、気分が悪くなります。

見つかって、最初に刑務所に入ったのは40代の半ば近くです。そこから出たときは、子供が引き受け手になってくれました。そこにまた売人の男がやってきて、ついまたね、よろよろと子供との暮らしを忘れて男のほうに走ったりして。

出所=法務省「令和2年犯罪白書」

生活保護では足りないから知り合いにクスリを売る

実は、子供と住んでいたとき、子供夫婦が夜、いつもけんかをしていたんです。聞くと、刑務所帰りの私と一緒に住むのが怖いと子供の連れ合いがいっていると。私、それを聞いたとき、いっぺんに泣けてきました。悲しくて、悔しくてね。それがわかった以上、ここにはいてられないと。ちょうどそんとき、男がやってきたから、その売人のほうに行ってしまったんです。

覚醒剤を売りさばくようになったのも、子供夫婦とのことがあったからです。家を出ようと思ったとき、お金のないみじめさを思い知りました。ああ、お金は持っとかなきゃいかん、絶対お金は必要やと。初めて、お金に執着がわいたんです。

もちろん、稼いで楽したいという気もあったと思います。それから、何度も捕まるようになってからは、私も相手も交互にぱくられますわね。刑務所の中での生活は、私物をほしいと思ったらお金がかかります。刑務所に面会に行くにも差し入れするにもお金いりますやん。刑務所出てから生活保護を受けていても、生活保護では足りんから、それでまた知り合いにクスリを売ってということをして、ずるずるになってしまったんですね。