全会一致前の「トイレ休憩」

同じく自民党の底力を感じさせるもう1つのエピソードがあります。反対派の顔を立てるための手法です。

自民党では、政府から出された法案に対して反対する議員が存在しているとしても、最後は全会一致というかたちにするように全力で努める。あの手この手を使って「まとめる」のです。

もちろん支援者との関係上、あるいは自分の信念によって、どうしても賛成には回れないという議員も当然います。そういうときに、いったいどうするか。賛成の決定を出す直前に「トイレ休憩」を入れるのです。

メンバー間の阿吽の呼吸でこのサインが出ます。サインを合図に、反対派議員は会議の場から静かに退出します。そうしている間に、決を取って全会一致で賛成に決めたかたちにしてしまう。

退出した議員が席に戻ってみれば、すでに全会一致で賛成に決まっています。彼ら彼女らは自分の支持者に対して、「自分がちょっと席を外している間に決めやがった。奴らは卑怯だ。許せない」と怒ってみせることで、言い訳が成立するというわけです。

自民党は、このようにあらゆる手段を使って党としての意見をまとめていきます。トイレ休憩を入れるやり方が道徳的に立派かどうかは、人それぞれ意見のあるところだと思います。

橋下徹『日本再起動』(SBクリエイティブ)

しかしなにはともあれ、最後はまとめる。まさに人間関係力に長けた議員たちの知恵の結晶といえるでしょう。

このように「全会一致」で決めれば、組織として団結し組織力が強まります。さらに国民の信頼を得ることもできます。

かつての民主党がそうでしたが、「重要な案件が山積みしているが、党内がバラバラの民主党では何も決められないだろう」と不安を覚えた有権者は「腐っても鯛」ならぬ「腐っても自民党」と、不祥事続きであっても自民党に一票を投ずることになるのです。

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