中国共産党を待ち受ける紛争後の余波

だがその後、最も起きうる可能性が高いと判断された「基本シナリオ」においては、中国の侵攻はすぐに失敗に終わる。台湾の地上部隊が海岸堡を急襲し、中国側は補給線の確保と内陸部への進軍に苦戦する展開が見られた。

その間にも、日本の自衛隊の援護を受け、米軍の潜水艦・爆撃機・戦闘機が戦闘区域に到達。中国の上陸艦隊を「急速に機能不全に陥れる」という。

10式戦車(富士総合火力演習にて)(写真=陸上自衛隊/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)

CSISはリポートを通じ、紛争後の余波にも触れている。それによると中国国内では、中国共産党の支持が揺らぐことが予見されるという。リポートは「中国も大きな損失を被っており、台湾の占領に失敗したことで、中国共産党による統治が不安定になる可能性がある」としている。

他方、防衛側の損害も計り知れない。台湾の経済は甚大な打撃を受けるほか、米軍の人的および物質的損失により、国際社会におけるアメリカの地位が揺らぐおそれがあるとリポートは指摘している。

日本は、台湾有事と無関係ではいられない

本稿では2つのシミュレーション結果を取り上げたが、互いに独立したシンクタンクが実施したこれらの解析結果は、同一の傾向を示すこととなった。台湾海峡の有事に日米が厳しい態度で臨むことにより、中国は2週間で撤退し、台湾の主権は守られることを示唆している。

同時に、これら2つのシミュレーションは共通して、中国軍の脅威が日米にも多大な損害をもたらすおそれがあることを物語っている。

また、例えば前者のシミュレーションはあくまで、各陣営の現在の兵力、および2026年時点で配備が予想される兵器に基づいている。しかし中国は、西太平洋地域における軍事プレゼンスの拡大を図っており、核戦力の増強も図っている。財団は、投入可能な兵器の状況によっては、中国軍がより有利に戦闘を進めるおそれもあると警告している。

日本にとって、こうしたシミュレーションの結果は、中国軍の脅威を強調するものであり、警鐘に他ならない。アジア太平洋地域の安全保障を維持するため、日本は引き続きアメリカと緊密な協力関係を築く必要があるだろう。

まずは有事に発展しないことを願うばかりだが、シミュレーションのシナリオのように日本へのミサイル攻撃が行われるのであれば、台湾情勢は無関係と見ることも難しくなってくる。中国軍の脅威に適正に対処するため、戦略的な準備が求められよう。

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