「逃げないで下さい! 総理!」で炎上した

ここで私が経験した炎上騒動について触れていきたい。

私が毎日新聞政治部に在籍していた2020年8月4日のことだ。当時、政府は、新型コロナウイルスの感染者が増加している一方でGoToキャンペーンを進めようとしていた。こうした状況に対し、野党は憲法にのっとって臨時国会の開会要求をしていたが、政権は国会を一向に開こうとしなかった。こうした姿勢に疑問を感じ、首相官邸で開かれた安倍晋三首相へのぶら下がり取材で「記者会見や臨時国会を開き、説明するべきではないか」などと問いただした。

これに対し、首相が「(国会開会は)与党とよく相談して対応する」と曖昧な答えに終始して去ろうとしたため、「逃げないで下さい! 総理!」と去り行く背中に投げかけた。

このことについて「失礼だ」「印象操作しようとしている」などと批判が起きた。8月8日の産経新聞朝刊に掲載された1面コラム「産経抄」は私の質問を「性悪」「底が浅すぎて、下心が丸見え」と糾弾した。

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質問の意図について対外的に発信し続けた

当時からYouTubeやツイッターなどを活用し、記者個人としても実名で発信していた私は、「総理には政府の方針をしっかりと責任をもって説明してもらいたい」と質問の意図について対外的に説明をし続けた。

また、炎上した私の質問については毎日新聞でも取り上げられた。ここでは、「総理に質問して、答えを引き出すことができるのは記者しかいない。私たち記者は総理への声かけ、再質問を積極的にやっていく必要がある」という私の見解も掲載された (「安倍首相は誰に向けて語っていたのだろうか わずか16分間の会見を考える」)。

それでも私の質問に対して「高圧的だ」などと批判をする人はいたが、一方で私の姿勢に対して「記者のあるべき姿だ」などと支持する声も少なくなかった。

私が自身の炎上騒動を通して実感したのは、自らの言動について説明責任を果たすことの大切さだ。ネット上には私の人格を否定するようなまとめ記事も出回ったが、繰り返し自分の考えや立場について発信する中で、応援の声も多く頂いた。

そうした様子が目に留まったのか、TBSのワイドショー「サンデージャポン」からも声がかかり、VTR出演で質問の意図について説明する機会もつくることができた。