寄せ集めの集団ではない

――ラピダスは以前の日の丸連合と何が違うのでしょうか。

【野原】ラピダスはトヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行の8社が総額73億円を出資し、2020年代後半に2ナノ以下の先端半導体の国内製造を目指しています。

今回のラピダスは、「とにかく各社の部門を寄せ集めた」という作りには、元々なっていません。

写真=時事通信フォト
記者会見後、撮影に応じる(左から)「ラピダス」の東哲郎会長、小池淳義社長、米IBMのダリオ・ギル上級副社長ら=2022年12月13日午後、東京都千代田区

ラピダスはIBMから「日本とパートナーシップを組みたい」という話が東京エレクトロン元会長の東哲郎さんに持ち掛けられたところから始まっています。

この話を聞いた東さんが「チャンスだ、何とか実現したい」と言って、ウエスタンデジタル日本法人の当時社長だった小池淳義さんに声をかけて、若手の研究者や半導体メーカーのトップエンジニアを集め、議論し、練り上げてきた。いわばスタートアップ企業です。

これまでの日の丸連合とはまったく違う

【野原】私は2021年10月に現在の職に就き、まずTSMC誘致を担当しました。そしてTSMCの投資決定の発表、支援根拠となる法律の改正、支援を実行できる補正予算の確保が終わるや否や、次はラピダスだ、と2022年1月から、小池さん、東さんはもちろん、IBM側の担当者とも議論を重ねてきました。ラピダス創設と第1弾の政府支援を発表したのは2022年11月ですが、それまでに水面下で様々な準備をしてきました。

今回はこれまでの「船頭多くして……」式の「日の丸半導体」的な集合体ではなく、社長を務める小池さん、会長を務める東さんがグリップを利かせているスタートアップです。

しかもお二人とも、それまでの会社を辞め、退路を断ってラピダスに賭けています。さらにIBMも優秀なスタッフをかなりの数、投入し「ラピダスの立ち上がりまで伴走する」ことになっており、本気度の高さを感じます。

ラピダスを巡る状況というのは、こうしたスタートアップ企業に対し、プロジェクトの趣旨に賛同する企業が出資し、政府も予算をつけて応援しているという格好ですから、かつての「日の丸半導体」企業とはそもそも成り立ちが違います。