糖質制限を始めてから二日酔いがなくなった
飲み過ぎて次の日に二日酔いになるという経験は、多くの人にあるでしょう。翌日の仕事に影響したり、せっかくの休日を台なしにしてしまうため、極力避けたいのが本音です。
私もお酒が好きなので、これまでにお酒を飲み過ぎて体調を崩すという失敗を、何度も繰り返してきました。
ところが、10年前に「あるもの」をやめてから、状況は大きく変わりました。
あるものというのは、「炭水化物」です。
お酒の量は変わらない、もしくは増えたのに、飲酒中に糖質、炭水化物を食べないようにしてから、翌日吐くようなひどい二日酔いがなくなったのです。もちろん、飲み過ぎれば翌日にお酒が残った感じはあるものの、寝込むことはありません。
これには肝臓の代謝が作用していると考えられます。
飲酒時の炭水化物が肝臓に負担のワケ
みなさんご存じのように、アルコールの分解を担っているのは肝臓です。この肝臓は、消化吸収した糖質をブドウ糖(グルコース)に分解し、脂肪として蓄積する働きも担っています。
しかし、お酒も加熱処理された穀物もなかった原始の頃の人間にとって、グリコーゲンを中性脂肪に変換する仕事もアルコールを分解する仕事も、本来は頻繁に行われるものではなかったはずです。
つまり、飲酒時の肝臓は、食生活の進化によって、かつてはそんなにしていなかった仕事を、大量にやらされている状態なのです。
このためアルコールを飲む際には、肝臓に負担をかけないためにも、炭水化物や加糖飲料などの糖質はできるかぎり控えるべきです。
人間にとってお酒は、糖質と同じように、大量に摂取することを想定されているものではありません。ですから、お酒を飲むのであれば、ルールを守ることで、飲酒のデメリットを軽減することはできます。
お酒だけで太るワケではない
アルコールを飲むと空腹感が増すという経験は、誰にでもあると思います。「アルコールを飲むと太る」と考えている人は多いですが、実際はアルコールによって刺激された食欲が暴走し、とくに炭水化物を中心とした食事を欲して食べてしまうために太るのです。
では、なぜアルコールを飲むと食欲が増大するのでしょうか?
それには血糖値の低下と食欲をコントロールするホルモンが関連していると考えられています。
アルコールを飲むと、タンパク質や脂質など糖質以外の栄養素から糖をつくり出す「糖新生」が抑制されるために血糖値が低下し、その反動で食欲が増すとされています。
アルコールは肝臓でアセトアルデヒドから酢酸に変わり、最終的に二酸化炭素と水になります。この際に、アルコール脱水素酵素はNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)を補酵素として大量に消費します。
このNADが不足すると肝臓での糖新生のサイクルも抑制され、結果的に血糖値が下がります。血糖値が下がれば自然と食欲が刺激され、多食につながっていきます。
また食欲は、ホルモンによってもコントロールされています。
食欲に関わるホルモンには食欲促進系と抑制系とがあるのですが、飲酒をすると食欲促進因子のグレリン、ガラニン、オピオイドの分泌が促進され、食欲抑制因子のレプチン、インクレチンの分泌は抑制されます。
この作用により食欲は暴走してしまうのです。
つまり、「お酒を飲むと太る」というのは、アルコール自体のカロリーで太るというより、アルコール摂取により副次的に起こる血糖値低下や、食欲を司るホルモンバランスの変化によって多食になることで起こるのです。