恐れている相手の長所を20個書き出してみる
・マンションの隣人から「あなたが引っ越してきてから、うちの家電が壊れるようになった」と文句を言われた
・上司が験を担ぐ人で「キミの日ごろの行ないが悪いから、今回の契約はうまくいかなかったんだ」と非難してくる
・パートナーが「前に似た薬を飲んで症状がひどくなったから……」と過去の体験に囚われて、新しい薬を飲んでくれない
言われる側からすると、「あなたの言うAとBには、なんの因果関係もないですよ」と思ってしまいますが、世の中にはこうした理不尽なことを言う人たちが一定数います。
実際、以前、わたしの講演会に参加された幼稚園の園長先生は、園の理事長からこんな言葉をぶつけられ、悩んでいました。
「キミのそのオドオドした態度を見ると、どうしても怒らずにいられなくなるんだ」
会うたびに言われるので、もう幼稚園をやめたいくらいだということでした。
しかし、ここで大切なのは、世の中には本当に理不尽なことを言ってくる人と、そうでない人の2種類の人がいるということです。そのどちらかを確かめるために、わたしは彼にこう質問してみました。
「理事長先生のよいところ、長所はどんなところですか? まずはそれを20個書き出してみてください」
言われたことを実際よりも大きくマイナスに感じる
すると「えっ、なんでそんなことが必要なのですか?」と言われましたが、「やってみればわかるので、とにかく書き出してみてください」と伝えました。
最初は「全然ない」と言っていた彼ですが、「子どもには思いやりがある」「教育に熱心」「面倒見がいい」「責任感がある」「スピーチがうまい」「保護者には定評がある」「人脈が広い」「旅行に連れていってくれた」など、1つ2つと書き出していくとどんどん出てきて、最終的に20個まで書き出せました。
すると、不思議なことが起こりました。あれだけ怖かった理事長への気もちが変わっていることに気づいたのです。
これまでストレスしか感じませんでしたが、よい面を知ると意外と教育者としてはよい部分もたくさんあったのだなと思えてきたそうです。
そして、理不尽なことを言われていると思っていたことも、厳しい言葉は彼にもっとよくなってほしいと思う気もちの裏返しだったことに気づきました。
つまり、「注目バイアス」の効果で、一度気になると理事長の悪い部分ばかりが目に入ってしまい、言われたことを実際よりも大きくマイナスに感じてしまっていたのです。