「私の権利を奪った誰か」にひどい目にあってほしい
実はこれ、韓国では「民族情緒」とされる、恨(ハン)の基本的な心理そのものでもあります。韓国内では、恨(ハン)の民族だとする主張に反対する人はそういません。優秀な民族なのに、他の勢力、主に日本のせいで、正当に持つべき権利のほとんどを奪われてしまった、そんな民族だと信じているからです。
恨(ハン)は、「私が持っているはずの正当な権利を、不当な方法を使った誰かに奪われた」とする心理から始まります。その「誰か」がどこの誰なのかは分かりません。だから、ハンは消えません。
このように、恨(ハン)と剝奪感は高い相関関係を持っています。しかし、基本的には「誰が悪いのか」をはっきりできないし、実際に何か出来ることがあるわけでもないので、そのまま抑え込むしかありません。だから、鬱状態になったり、病気になる人も少なくありません。韓国ではこれを、鬱火病、または火病といいます。最近はまったく逆の意味で、ちゃんと抑え込まず何でもカッと怒り出す人を火病と言う場合もありますが。
韓国で被害者ビジネスがまかり通る理由
日韓関係はもちろんのこと、国内の事案についても、韓国にはいわゆる被害者ビジネス(被害者という点を強調して各種恵沢を受け取ろうとする)が多く存在します。これもまた、社会に蔓延するこの恨(ハン)の心理を利用したものだと言えるでしょう。本当に悪いのかどうかは二の次、ただ「あいつが悪い」と標的を決めつけて、「だからあいつに怒ればいい」という名分さえ作ることができれば、社会的にかなりの支持を得ることができます。
もちろん、医学的にも、現代社会の副作用的にも、この恨(ハン)状態、相対的剝奪感をなんとかすべきだと思う、肯定的な方向性で悩む人たちはいます。漢方医学で、カウンセリングで、そして様々な書籍などで、彼らは相応の活動をしました。
しかし、そのような流れは、長らく、そして広く根付いている、「恨」の文化の前では、大きな成果を出すことはできないでいます。なにせ、なんの戸惑いもなく「韓国人は恨の民族」だと言う人が多いですから。まるで、被害者だからと自慢でもするかのように。特に、この相対的剝奪感や鬱火病関連の研究は、青年層にはほとんど向けられませんでした。
なぜなのか。恨(ハン)とは、親が子に残すものであり、子が親のためにそれを晴らすのが「最高の親孝行」だからです。そういう観念があるためか、「若い奴らに相対的剝奪感などあるわけないだろう。自分で頑張ればなんとかなる」とする社会的雰囲気が強く、若い人たちが心のストレス、社会への絶望などを話しても、それを「剝奪感」と結びつけて考える人は、そういませんでした。
まだ若いのに剝奪感も恨(ハン)もあるわけないだろう、もっと良い職業に就くことができれば、すべて治るから大丈夫だ、それだけでした。