日本では大学進学で理系を選択する女性が少なく、理系の女性割合はOECD諸国で最低だ。なぜなのか。東京大学国際高等研究所の横山広美教授は「さまざまな要因があるが、そのひとつとして親のジェンダー意識が影響していると考えられる。ジェンダー平等度の低い親はそもそも進学自体に否定的であり、母親が「女子は数学が苦手」という間違ったステレオタイプを持っていると娘の理系進学が下がる」という――。
※本稿は、横山広美『なぜ理系に女性が少ないのか』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
理系の女性割合はOECDのなかで最低
日本は世界的に見て理系女性が少ない国で、女性の割合はOECD(経済協力開発機構)諸国で最低です。理系に女性が少ないことについては、皆さんも耳にされたことがあると思いますが、そもそも大学進学において、日本は男女格差の大きい国であることをご存じでしょうか。
大学進学において男性優位の国は、OECD諸国でもほとんどなく、アジアの中でも日本の状況は稀であるのが現状です。女子の大学進学率が男子よりも高いという、いわゆる「落ちこぼれ男子問題」をはじめ、各国でその理由は異なると思いますが、大学のキャンパスに男子のほうが多いのは、世界では珍しい状況なのです。
ではなぜ、大学進学率が男性より低いままなのでしょうか。また、女性学生の割合が極端に低い分野があるのはなぜなのでしょうか。なぜ、日本では女性の理系進学割合が低いのでしょうか。
問題の背景にある「社会風土」
こうした問題の背景には、「優秀さは男性のものであり女性には不要である」という「社会風土」があると考えられます。
「社会風土」とは聞きなれない言葉かもしれませんが、「social climate」という言葉で、研究分野では広く使われています。これまで日本では、女子生徒の理系進学と社会における平等の関係についての研究はほとんどなかったと思います。しかし、単に個人の選択だと思われていた進学の問題は、実は親や学校の教員だけでなく、社会全体の風土が作る影響を、大なり小なり受けているのではないでしょうか。