店内はモクモクしていなかった…

――具体的にはどんな設備投資を行ったのでしょうか。

最新の空気浄化システムの導入です。

通常の空気清浄機は、その場で空気を吸ってその場で吐いています。私たちの店舗では、大手空調メーカーと協同し、ロングサーキット(吸煙口と給風口が離れていること)を活用した空気循環システムを採用しています。天井裏にダクトを通して浄化して、離れたところで排出しています。さらに、においや粉塵を取るために大容量の活性炭フィルターを入れています。各店舗共に500万円ほどかかりました。

最初につくった3店舗は、それぞれの設備のスペックを3段階で用意しテストをしました。このうちロースペックだった新橋店は、昼の時間帯など満席になると煙が気になって納得のいくものではありませんでした。そこで再度設備投資を行い、この店舗には空気浄化システムだけで他2店舗の倍以上の投資をしています。

写真提供=C-United
席に座って自由に喫煙できる。

――社内から反対の声はなかったのでしょうか。

通常なら赤字店舗は閉めますよね。社内にも「もう閉めるしかないな」という雰囲気がありました。しかし、当社が目指しているのは「街の資産」となるお店づくりです。簡単に閉めるわけにはいかない、どうにか続ける方策はないか、と考え続けました。

いつも意見が割れるのに、部下たちがすぐ賛成した

さまざまな店舗のお客さまの傾向、喫煙所の行列を見ているうちに、ふと「喫煙目的店舗にしよう」と思ったんです。そのアイデアを自分なりに検証し、部下たちに提案をしたらすごくいいリアクションが返ってきたので驚きました。私以外、幹部たちは全員喫煙者だったんです。

私が何かをやろうって声をかけると、大抵、半分ほどはネガティブな反応が返ってくるんですが、このときは幹部メンバー全員が「それはいいですね」と。誰一人反対しませんでした。新しい施策があんなに短期間で合意形成できたのは初めてかもしれません。

撮影=遠藤素子
アイデアが形になるまで、とんとん拍子で進んでいった。

そこから開店までは非常に早かったですね。構想から2~3カ月程度で開店することができました。

海外投資家の中には、ESGの観点から喫煙目的店舗への改装を疑問視した方もいました。でも、あらかじめ定めていた社会的役割を説明することで同意を得ることができました。