喫煙目的施設だから「調理」ができない

――開店に際して特に苦労したことはありますか。

THE SMOKIST COFFEEは喫煙をサービスの目的とする施設で、健康増進法の「喫煙目的施設」にあたります。このため行政との折衝が必要でした。

店内空気の基準値をクリアしたうえで、タバコの販売免許も必要です。さらに苦労したのが、食事の提供方法でした。

「喫煙目的施設」では、席で飲食をしながらタバコが吸えるのですが、食事の提供はランチタイムに限られ、店では「調理行為」はできません。

すべてを「調理」ではなく「作業」に落とし込まなければいけなかったので、商品開発には苦労しました。例えばパスタは炒められません。サンドイッチも作れません。店でできることは温めと盛り付けだけ。このあたりは行政に確認・相談をしながら商品開発を進めました。

インタビューに応じる友成社長
撮影=遠藤素子
調理と作業の線引きが難しく、商品開発に苦労したという。

――アルバイトはなかなか集まらないのでは。

喫煙目的店で仕事をしていただくわけですから、その分、時給を高く設定しています。おかげさまでベローチェよりも応募が多いです。

例えば東新宿店のアルバイトを募集した時、20~30人を採用しようと思っていましたが、200人ほどの応募がありました。最初は時給1300円、通常のベローチェが1050円でした。今では当たり前の金額になってきましたが、2年前は「え、そんなに高いの」という感じでしたね。

応募者は喫煙者ばかりではありません。タバコを吸わない人も働いています。私たちが店長や社員を配属する時は、希望や同意を得て配属しています。

クレームがくるだろうと不安でいっぱいだった

――タバコを嫌う人たちもいます。開店に際して不安はありませんでしたか。

不安はありました。実は最初の3店舗を開く際は、消費者団体や地域の方々、タバコを吸わない人たちから相当なクレームがくるだろうと思っていました。妻に「自宅にクレーム電話がかかってくる可能性もあるよ」と言ったぐらいです。

でも、実際に開店してみるとまったく逆でした。本社の問い合わせ窓口に「こうしたお店をつくっていただけたので路上喫煙がなくなってうれしいです」といったメールなどが届くなど、タバコを吸わない方たちからも賛同をいただきました。

私としてはかなり身構えて開店に臨んだのですが、いい意味で予想外の反響をいただけて、挑戦して本当によかったなと思いました。今では、店の存在に関して地域で一定の合意形成ができてきたのではと感じています。

インタビューに応じる友成社長
撮影=遠藤素子
クレームを覚悟していたが、好意的な声が多く届いた。