同じ生き方をしなくていい社会

もう1つの例は、フィンランド人党(Perussuomalaiset)という右翼政党の前党首で国会議員のユッシ・ハッラアホ(1971~)だ。

2021年6月、2カ月後に予定されている党首選挙には出ず、党首の地位を退くと発表。8月には新党首が選出された。支持を伸ばしてきた党であり、ハッラアホは強い影響力を持つ人物だが、党首を務めたのは1期4年間のみだ。

会見では「長々とトップに居座ることにはケッコネン・シンドロームの危険がある。自分は必要とされていて、他に替えはないと思い込んでしまう」と語った(※3)

ケッコネンというのは、ウルホ・ケッコネン(1900~1986)のことで、1956年から81年の25年間フィンランドの大統領を務め、認知症の症状が出ているのに職位に執着した人物である。

岩竹美加子『フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか』(幻冬舎新書)

ハッラアホは、退任の理由を明確にしていない。2014〜2019年、ブリュッセルで欧州連合議会議員を務めた経験もあり、他の野心を持っている可能性もあるが、トップの座に執着せず離れた例の1つである。

その経歴だが、兵役を避けてシビルサービスにつき、1994年にウェイターの学位を取得。その後、ヘルシンキ大学でロシア語を学び2000年に修士号を、2006年に古代教会スラブ語の文法史についての論文で博士号を取得。5児の父でもある。

こうした生き方を見ていると、職位に対する執着のなさに加えて、人がそれぞれの時間を生きられる社会という感を強くする。人と同じように生きなければならないのではなく、自分の人生を生きていける社会である。

※1 日本経済新聞、「米加州、ウーバーとリフトを提訴『ギグワーカー』保護」2020.5.6.
※2 I ltalehti . 2020.8.24. Pääministeri Marin vaatii lyhyempää työaikaa:“ Yksi tapa jakaa vaurautta on tehtyjen työtuntien vähentäminen siten, ettei palkkataso heikkene”.
※3 Y le . 2021.6.21.“Jussi Halla-aho jättää PS:n puheenjohtajan tehtävät-Työmies Putkonen:"En avaa tätäenempää, koska alan pillittää", Huhtasaari ei aio ehdolle”.

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