フィンランドで、デパートに店員が少ない理由

また、高齢化によって今後働く期間が長くなる。高齢化した家族のケアをしたいと思う人もいる。

政府の報告書「社会的、経済的、地球環境的に持続可能なフィンランド」(2019年)が、働き方の柔軟性を高める多様な働き方の一つとして、パートタイムワークをあげており、大きな変化を感じさせる。

もう1つ派遣という働き方もあるが、フィンランドではそれについても否定的な見方が強い。派遣会社が現れ始めたのは、2000年代である。

息子は高校時代、派遣会社の紹介によりコンビニでアルバイトをしていたことがあり、特に若い人の一時的な働き方としてありうるだろうが、働く人の権利とウェルビーイングを重視する立場から、フィンランドでは派遣という働き方には否定的だ。

つまり、個人事業主という働き方には肯定的だが、パートと派遣には否定的な傾向があるといえる。

フィンランドは商店やデパートに店員がとても少なく、店員が多い日本と対照的だ。

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一人ひとりに支払わなければならない福利厚生などの経費が大きいので、多数の店員を置くことができない。被雇用者の権利を重視する結果、店員が少なく顧客への対応に時間がかかる、サービスが悪いということになる。

つまり、「お客様は神様」ではなく、従業員の労働の権利の方を大事にするシステムである。

進む労働時間の短縮

フィンランドは朝が早い。スーパーは、朝6時か7時には開く。会社やオフィスは、8時から4時勤務が多い。電車やバス、道路は3時半頃には混み始め、ラッシュアワーが始まる。

基本的には、居住する自治体か近隣の自治体で働くので勤務先は近い。それは、家の売買が簡単で気軽に引っ越せるという理由もあるだろう。

仕事が終わると子どもを保育園に迎えに行ったり、家で軽く食事したり、ジョギングに行ったり、趣味の活動をしたりの時間になる。もちろん自営業や三交代勤務などさまざまな職業と働き方があるが、こうした働き方が一般的だ。

しかし、さらに労働時間を減らそうとする動きがある。2020年8月に、サンナ・マリン首相は社民党の政策として3年以内に給料を下げることなく1日6時間、週4日労働を具体化することを提言した。「1日8時間労働が最終的な形だろうか。家族、近親者、趣味、教養のために使う時間がもっとあっていい」と述べている(※2)

労働時間の短縮は、社民党が歴史的に求めてきたことである。1900年代初めの労働運動は、1日8時間労働を要求した。工場での労働は1日16時間に及ぶこともあったが、休暇は特に定められていなかった。

1917年に、国会が1日8時間労働を承認したのは歴史的な出来事だ。当時は週6日の労働で、週48時間労働だった。労働時間が週40時間に減るのは、1966年に発効した法律による。

それによって、60年代末までに週5日制が浸透した。給料は下がらず、かえって上昇したという。

また、同時に休暇も増やしていった。1939年の年休法によって、賃金労働者は2週間の年次休暇を得るようになったが、それが4週間に延長されたのは、60年代初めだ。60年代の労働運動は、労働時間の短縮と余暇の増加をめざした。