日本の勤労者の半分以上は「負け組」

同じような傾向がキャリアの終わりに関する意識にも表れています(図表5)。「自分のキャリアはもうこれで終わりだ」と考える人の割合と、「自分のキャリアはまだまだ伸びる」と思う人の割合は45.5歳で反転します。

出世したくない上にキャリアも伸びないと思っている人たちが居座り、成長したいという意欲のある人を抑えつけてしまっている――ダイナミックな組織になるのを妨げる重しである、いわゆる「粘土層」を形成し組織の沈滞化を招いているのが現状なのです。

残念ながら、日本の勤労者の半分以上は今では負け組ということになります。本当の負け組というよりは、学びを放棄し自分自身で自分を負け組と位置付けているというべきかもしれません。変化が速い時代に、学ぶのをやめることは、経済社会全体の悪循環までを引き起こすのです。

これは雇用の流動性・キャリア自律意識を高めずに、勝ち負けだけでレッテルを貼るような安易な成果主義を導入したツケでもあり、人的観点から日本企業の成長を縛る構造問題であると言えます。

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「ギラギラ」したことを好まない日本人

こうして日本の地盤沈下は止まりません。「学ばない国・日本」の国際競争力が低下しているのは当然の結果でしょう。日本はモノづくりを基盤とした工業生産力モデルで躍進してきましたが、一時の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」のおごりとバブル崩壊を経て、世界のデジタルシフトに対応したビジネスモデルイノベーションができずに成長できない、いわゆる「失われた30年」が今も続いているのです。

なぜ個々人が学ばなくなったのか? その理由はいくらでもあります。学ぶ習慣がない、学んでもしょうがない、学ばなくても大丈夫、学びは会社任せ、学ぶ金がない、学ぶ暇がない、学ぶメニューがありすぎて選べない、学ぶのは苦痛、学ぶより今の楽しみを追求したい……。

日本は依然として世界第3位の経済大国であり、やりたいことができる環境がある程度整っています。その一方で、あえて何かにチャレンジするよりは、現状の範囲内でやれる範囲のことをやるほうが安心だとも考えられます。

リスクを取って何かを変革したい、起業したい、新しいことに挑戦したい……というのは「ギラギラ」したことで、安全運転して、怒られないように、失敗しないように、ネガティブなものを寄せ付けないようにすることをよしとする風潮もあるでしょう。