「両極端の人が罵倒し合う場所」を変えられるか

【小島】ネットは、両極端の人が罵倒し合う場所、きわめて偏った意見がマジョリティの意見であるかのように見えてしまう場所であると。山口さんは、SNSを建設的で、サイレント・マジョリティの意見が可視化されるような場所に変えることは可能だと思われますか。

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それを市民がやることが可能なのか。メディアリテラシーを身につけた一般市民、あるいはオールド・メディアがネットの言論空間に介入するかたちで、よりマシなものに変えていくことができるのか。できるんじゃないかと考えるのはあまりに楽観的すぎるでしょうか?

【山口】いや、楽観的すぎるということはないと思いますね。今、そういう意見の高まりがあるのを私も感じています。ネットの言説空間を変えていくには、様々な方法が考えられます。それこそモデレーターをつけるとか、アルゴリズムを用いて両論併記にするとか、プラットフォーム事業者は今そういう技術について関心を持っているはずです。

ヤフコメが解決できていない2つの問題

【山口】例えばNewsPicksは、まさにそれを考えていたわけですね、実態として今そうなってるかは別の話として。他にも、スマートニュースはフィルターバブルの問題を解決する試みをおこなっています。

フィルターバブルの問題とは、自分の見たいものばかり見てしまって、意見が極端になったり、視野が狭くなったりすることです。だからあえてノイズを入れるような工夫を施すなど、いろいろな事業者が状況の改善を考えている。Yahoo!のニュースコメント欄も、アルゴリズムを使って建設的な議論モデルに近づいています。論理的なコメントが上のほうに表示されるようになってきている。

【小島】工夫しようとはしているようですね。

【山口】それでもネット上の言論はまだ偏っています。Yahoo!の例でいうと、問題は二つあって、一つは、誹謗中傷的なものがまだかなり残っているということ。もう一つが、論理的な文章か否かでコメントが表示される順序が決まるということ。

反ワクチン的な考えを持った人が、論理的な文章で大量に書けば、そのようなコメントばかりが上に来ます。実際そういった現象が起きているのですが、それでは議論にならないですよね。反ワクチン派とワクチン賛成派の両方が上にくるならいいんです。まずは両論併記になることが重要です。