皇室は少子化と無縁なのか
岸田文雄首相は本年の年頭の記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と述べた。“異次元”というインパクトの強い表現を使ったことで大きな反響を呼んだ。去る1月23日に召集された第211回通常国会の施政方針演説でも、岸田首相は「出生率を反転させなければならない」と少子化への取り組みを強調した。しかし早くも、その実効性への疑問や財源への不安感などが浮かび上がっている。
ここでそうした議論に立ち入るつもりはないが、「少子化」が現在、わが国が抱える最も重大な課題の1つであることは、疑いがない。
では皇室は少子化とは無縁なのか、どうか。皇室の将来を見通す上で、この問題は度外視できない。そこでこの点の実情について振り返ってみたい。
日本全体よりも少子化が進んでいる
上皇陛下以降の世代において、ご結婚によって皇室にお入りになった女性方(皇后・上皇后・親王妃)の数(6人)を分母とし、実際にお生まれになったお子様方(親王・内親王・女王)の数(12人)を分子にして値を出すと、6分の12でちょうど“2”になる。
病気や事故の可能性を考慮すると、一般的に人口が減らない限界はほぼ2.1とされている。だから2というのは、皇室の維持・存続という観点からすれば、決して安心できる数字ではない。
しかも一般国民の場合、数値を押し下げているのは非婚率の高さだ。なので、ご生涯、独身を通された事例(1人)や、現時点で結婚平均年齢(男性=31.0歳、女性=29.4歳)より5歳以上、年齢が上で未婚の方(3人)も一応、分母に加える。すると、10分の12となって、“1.2”という数字になる。
これは国民の合計特殊出生率(令和3年[2021年]で1.30)よりも低い。ただし、こちらの数字は未婚の方々が結婚されれば、その分だけ改善することになる。それでもすでにご独身のまま亡くなられた方がおられるので1.7…以上にはならない。
いずれにしても、楽観できる数字ではない。こうした状況がにわかに好転することは考えにくい。むしろ、一般的な晩婚化の傾向を見据えると、皇室においても一層、少子化が進む可能性も織り込んでおくべきだろう。
次の世代の「男系男子」は1人だけ
それ以前に、上皇や天皇陛下の世代には、現在の皇室典範が皇位継承資格を認める「皇統に属する男系の男子」が複数おられた。上皇陛下の世代に“5人”、天皇陛下の世代には“2人”という状況だった。
ところが、次の世代では周知の通り、秋篠宮家のご長男、悠仁親王殿下ただ“1人だけ”となっている。「男系男子」限定というルールのもとで、短い期間に次世代を生み出す基盤そのものが“極小化”してしまった。