大統領制を推す幸福の科学

衆議院議員選挙に挑戦するにあたって、幸福の科学では、『新・日本国憲法試案』を発表している。これは書物の形で幸福の科学出版から刊行されたが、前文と16条の条文からなっていた。あわせると17条で、聖徳太子の十七条の憲法が意識されていた。実際、第一条では、「国民は、和を以って尊しとなし、争うことなきを旨とせよ。また、世界平和実現のため、積極的にその建設に努力せよ」と、十七条の憲法を下敷きにしていた。

島田裕巳『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)

この憲法は、国民投票によって選出される大統領が元首となり、強い権限を与えられていることに特徴があった。大統領制となると、天皇の地位が問題になるが、第十四条では、「天皇制その他の文化的伝統は尊重する。しかし、その権能、及び内容は、行政、立法、司法の三権の独立をそこなわない範囲で、法律でこれを定める」とされ、その点で天皇を日本国の象徴とする現行憲法とは内容が大きく異なっていた。尊重が何を意味するのか、具体性がないが、日本を共和制の国家に転換することが、その主旨となっている。

この憲法では、教祖である大川隆法が大統領となることが想定されているのであろうが、大統領は国民投票で決定されるので、それが前提とされるわけではない。大統領制を採用するなら、天皇制を廃止するのが当然の流れかもしれないが、そこまで踏み込んではおらず、徹底さを欠いている。それは、天皇という存在を幸福の科学が格別意識していないということでもある。この点に、天皇ということと深くかかわる新宗教をめぐる政治的な環境は、平成になってかなり変化してきたことが象徴的な形で示されているのである。

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