因果関係を示す結果ではないが、問題視されている

対照的に、ヨーグルトやチーズといった発酵した乳製品は、酸化ストレスを引き起こさなかったばかりか、とりわけ女性において寿命が延びることに加え、骨折リスクも低下した。要するに、牛乳は寿命を短くするが、ヨーグルトとチーズは寿命を延ばすのである。

牛乳と、ヨーグルトとチーズでは何が違うのか。ヨーグルトとチーズは、発酵によって乳糖が分解したため、骨折リスクと寿命における好結果に結びついた、と推測できる。この論文の結論は、こうだ。牛乳をより大量に摂取することによって男女とも、骨折リスクは低下しないだけでなく、死亡率は上昇していた。

牛乳に含まれるラクトースとガラクトースが死亡率の上昇に関係している、と推測できる。これまで骨折を防ぐために牛乳をたくさん飲むように推奨されてきたが、この研究結果によってその有効性に大いなる疑問が投げかけられた。

生田哲『「健康神話」を科学的に検証する』(草思社)

ただし、この研究結果の解釈には注意が必要である。牛乳が死亡率を上昇させるという結論は、スウェーデンだけでなく、牛乳摂取量の異なる他国でも追試し、確認されなければならない。それから、この研究は牛乳、骨折、死亡率に相関関係があることを示すものであるが、牛乳が骨折と死亡率を高めるという因果関係を示すものではない。

ニューヨーク市立大学のメリー・スクーリング教授は、こういう。「牛乳・乳製品の消費量は、経済の発展と動物性食品の消費の増加にともない、地球的規模で増加する傾向にあることから、牛乳と死亡率の関係を明らかにしなければならない。しかも、直ちに」。今、欧米を中心に、牛乳・乳製品の摂取量についてのガイドラインを見直す議論が巻き起こっている。

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