猫は「永遠の赤ちゃん」
ところで、なぜ、そこまで猫に感情移入したのか。
「たぶん、私の共感力が高いからだと思うんです。線引きができない。子供の虐待のニュースなどを見ると、苦しくて悲しくてたまらなくなります。子供を助けることはできませんが、猫は助けることができます。
それに、猫は『永遠の赤ちゃん』として、私だけを頼りに生きてくれる。私に世話をされないと生きていけないので、ひたむきに私を頼ってくれるのです。猫はさみしい心に潜り込んでくる」
人間の世界は差別だらけだ。容姿、収入、勤務先、学歴、無意味な暴力……それにまつわる不安、自責の念、苦しみなどがミルフィーユのように重なり合っている。
「私は会社の人から『独身でボロ家住まいの猫ババア』だと思われています。一応大きな会社ですが、あれだけ努力して勉強したのに、やりたくもない仕事をしており、友達も少ない。
こんなはずじゃなかったと泣きながら眠っていると、背中のあたりで猫が丸まっている。そのぬくもり、生きている気配に癒されるのです」
借金してでも猫の保護をし続ける
猫を飼うのにはお金がかかる。家を現金一括で購入したために、貯金は使い果たしてしまった。
給料は手取りで30万円、猫にかかる食事代や医療費は月に3~6万円。エアコンをつけっぱなしにするために、光熱費もバカにならない。
「コロナによる業績不振で、ボーナスはカットされました。でも、猫の保護はやめられない。借金してでもやる予定です」
猫は20年生きると言われている。一時期は20匹以上いたが、現在は8匹だという。その他の猫はどうしたのだろうか。
「里親さんにもらってもらいました。本当に信頼できる人に譲渡して、どの子も幸せに生きています。ウチにいるのは障害があったり、持病がある子ばかりです」
猫が原因で近隣からも孤立しているが気にしないという。「猫を助ける」という強い思いがあるから、その沼にはまっても幸せなのだ。