7世紀から続く風習、かつては敬われる存在だった

もともとデーヴァダーシーは、女神にその身を捧げ、神前での舞踊などの芸を学ぶ制度だった。7世紀から続く、由緒正しいしきたりだ。

1870年代、インド・カシミール地方出身の少女たち(写真=Old Indian Photos/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

歴史家のガヤトゥリ・アイヤー氏はAFP通信に対し、「まかり間違っても本来の援助制度には、宗教的に是認された性的奴隷という考え方はありませんでした」と説明している。

古来、多くのデーヴァダーシーたちは、吉祥を告げる存在として敬われていた。彼女たちは高度な教育を受け、ヒンドゥー教寺院に古くから受け継がれる舞踊や儀式の習得に専念することができた。その生活は豊かであり、自ら選んだパートナーとの性交渉も許されていたという。

ところが19世紀にイギリスが入植すると、状況は一変した。神聖なデーヴァダーシーと女神との契りは、性的搾取の制度へと変貌を遂げた。

現在では実質的な身売りであるとして問題視され、制度は表向きには禁止されている。インド政府は1988年にデーヴァダーシーの風習を法律で禁止しカルナータカ州ではこれに先んじて1982年にデーヴァダーシー制を廃止した。

だが、司祭が金銭目的で密ひそかに取り持つ例が後を絶たない。制度の撲滅を目指す女性団体「ヴィモチャナ」の創設者は、ガーディアン紙に対し、特定の下位カーストの人々にとっては生きる手段になってしまっていると説明している。

宗教の名を借りた売春の手段になっている

AFP通信もデーヴァダーシーについて、「親に強制される形でヒンドゥー教の神との手の込んだ結婚の儀式に臨み、その後、彼女たちの多くは違法な売春を強いられる」ものだと指摘している。

インド・ニュースメディアのインディアタイムズは、デーヴァダーシーたちが強いられる宗教儀礼の数々に、制度の野蛮さが表出していると指摘する。競りで買われる「初夜の儀」さえ、宗教的に正当な通過儀礼のひとつだと弁明されまかり通っている。

同紙はまた、司祭の介入も指摘する。「『宗教的な職務』の一環として司祭は、彼らの寺院に入門した女性の一人ひとりと関係を持つとされる」のだという。

司祭との接触に関しては、ここ数世紀で始まった習慣ではないようだ。ラマニーク博士は論文を通じ、デーヴァダーシーたちには古来より、司祭の性的欲求を満たす役割が与えられていたと論じている。