骨は本来の正しいポジションから外れてしまうので、スムーズに動くことができなくなり、動きも制限されます。筋肉をゆるめてあげると、関節の可動域(動かせる範囲)が広がり、引っ張られていた骨も自然と元の位置に戻ってくれます。

本来あるべき場所に骨や筋肉があると、とても機能的に動かせますし、体もラクになります。スポーツでも仕事でも、力が抜けているときのほうがいつも通りのパフォーマンスができます。

私が「がんばらないでほしい」とお伝えしているのは、このような理由からです。

胸を張ると肩、首、腰にガタがくる…

人間の体の構造を、わかりやすく空のペットボトルで例えてみましょう。体に負担のないラクな姿勢は、ストンとしたきれいなペットボトルの状態です。ところが胸を張ると、身体を前に突き出した反動で腰が大きく反ってしまいます。これは、ペットボトルがぐにゃりとつぶれて、歪んだ状態になります。

こうなると、体に力を込めないとバランスがとれません。ただ立つだけで、筋肉に必要以上の負荷がかかっている状態なのです。この姿勢を続けてしまうと、呼吸の質の低下、内臓機能の低下、肩こりや首こり、腰痛、スタイルの悪化などをもたらします。「たかが姿勢で?」と、大げさに思われるかもしれませんが、詳しく紹介していきます。

写真=iStock.com/AsiaVision
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まず、胸を張った姿勢をとると、呼吸が浅くなります。「胸腔きょうくう」という、肋骨や横隔膜などで囲まれた空間に左右の肺がおさまっているのですが、この胸腔がつぶれて、うまく広がらなくなってしまいます。

また、胸を張ると骨の位置はどうなるでしょうか。①肋骨は前につき出て、②背骨は反り、③骨盤は傾いた状態になります。ペットボトルがいびつに歪んだ状態です。容器が歪むと、中におさまっている臓器が圧迫されます。

つまり、内臓の働きが悪くなってしまうのです。胃が圧迫されると胃の不調に、腸が圧迫されると便秘に、卵巣や子宮が圧迫されると生理痛などにつながります。

「がんばる姿勢」をやめることがベスト

胸を張ると、いかにも体がグーッと上に上がったように感じるかもしれません。でも、実際に体の中で起こっていることはその逆で、内臓は「上から下へ」押されてしまっているのです。

ペットボトルがきれいな形のとき、人間の背中はゆるやかなS字カーブを描いています。胸を張った姿勢をとると、腰が反って、S字カーブがきつくなります。腰に過度な負担がかかるので、腰痛の原因になります。