肩こりや腰痛を防ぐにはどうしたらいいのか。ウォーキングコンサルタントの犬飼奈穂さんは「胸を張って背筋を伸ばす姿勢が『いい姿勢』とされているが、それは間違いだ。筋肉に必要以上の負荷がかかってしまい、身体の不調の原因になる」という――。

※本稿は、犬飼奈穂『背中をゆるめると健康になる』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

背筋を伸ばして歩く人
写真=iStock.com/AH86
※写真はイメージです

がんばる姿勢はダメな姿勢

「体に力を込めて何かをがんばること」がクセになっている人は要注意です。まずは、次のようなことに心当たりはないでしょうか?

・胸を張って歩く
・下腹に力を入れてお腹を引っ込める
・お尻にキュッと力を入れて立つ
・ストレッチで思いきり筋を伸ばす
・長時間パソコンの前に座り、肩を上げたまま作業する
・気がつくと歯を食いしばっている
・やらなければいけないことを常に考えている

このどれもが、筋肉を固くしてしまう習慣だということを、まず覚えておいてください。がんばる人は、筋肉が固くなっていることが多いのです。

筋肉には、力を入れているときに固くなり、力を抜いたときに柔らかくなるという性質があります。かくいう私もいわゆる“スポ根世代”で、「力いっぱいがんばることが良いことなんだ!」とずっと思い込んできました。

ジムや姿勢改善のインストラクターからも、肩甲骨をグッと寄せて胸を張り、がんばって「良い姿勢」をキープするよう、繰り返し指導されてきました。

でも、人間にとって、力を入れ続けることは決して自然な状態ではありません。疲れる動作や姿勢は長続きしませんし、力を込めていることが原因で体に余計な負荷をかけ、不調を訴えている人も実際に多いのです。

姿勢のためにがんばってはいけない

筋肉は、ゆるんだり縮んだりすることで、ポンプのような働きをして、血液やリンパ液を流しています。細胞のすみずみまで酸素や栄養を届けたり、老廃物や余分な水分を回収したりするのに、筋肉の動きはとても重要です。

ところが、体に力を込めて筋肉が緊張した状態が続くと、筋肉が弾力性やしなやかさを失ってしまいます。筋肉は一時的に「固い」状態から、常時「固まった」状態になります。こうなると、自分ではリラックスしているつもりなのに、筋肉はゆるまず、固いままなのです。

筋肉のポンプ作用が働かなくなると、血液やリンパ液の流れが阻害され、酸素や栄養の運搬・老廃物の排出が滞ります。こうして、疲れやすさやコリ、痛み、不快感などの不調が発生します。また、筋肉が固まって収縮すると、骨が引っ張られてしまいます。