ネガティブな言葉は、「リフレーミング」でかわす
クレームやカスハラだけではなく、このように悪意はないけれど不用意な言葉をかけられることは、接客中よく遭遇します。
罪を憎んで人を憎まず。配慮がないネガティブな言葉は不快ですが、お客様に悪意がないのですから、言葉自体の意味にとわれず上手にかわすのが賢明です。
優秀なサービスパーソンはこういうときの対応が実に素晴らしく、感動を覚えることもあります。そして、そのやりとりがきっかけで顧客になってくださることも少なくありません。
こういった対応が即座にできる理由は、感情を自分でマネジメントできているからです。ネガティブな言葉で傷ついた自分の心を魔法の呪文で癒すのです。
ドラクエの「ホイミ・ベホイミ・ベホマズン」のように自分で自分を元気づけます。すると、自分の言動まで変わるのです。
そのスキルは、「リフレーミング」と言います。リフレーミングとは、家族療法から生まれた認知を変えるスキルのこと。
認知とは、目の前の出来事・物・人を知覚したとき、それが何か判断したり解釈したりする思考のプロセスです。
出来事の捉え方を180度変える方法
私たちは物事を認知するとき、特定の枠組み(フレーム)で捉えます。
そこで、「ネガティブな感情を伴うフレーム」を「ポジティブな感情を伴うフレーム」に変えてしまいましょう。すると出来事に対する感じ方も真逆になります。つまり、嫌な気分があっという間に変わるのです!
たとえば、冒頭の後輩CAの場合、「体格いいね、レスリングでもやってんの?」という言葉に対し、「相撲です」と返答しました。
嫌味や皮肉もそう捉えないで、「冗談を楽しむ機会」だと彼女は捉えたからこそあの対応ができたのだと思います。これを「状況のリフレーミング」と言います。
リフレーミングは、状況以外にも、出来事に対してポジティブな意味を見出す「内容のリフレーミング」や、言葉に対してポジティブな意味に捉える「言葉のリフレーミング」などがあります。
ここでは、私が常日頃から実践しているホイミスキル「言葉のリフレーミング」を練習しましょう。
たとえば、上司のAさんは優柔不断だと職場で思われています。あるときAさんは、後輩のBさんにランチに誘われました。
Bさん「Aさん、皆と一緒にランチに行きませんか? Aさんは、何がいいですか?」
Aさん「うーん、何がいいかなぁ。中華もいいしイタリアンもいいし、迷うなぁ。ステーキもいいし蕎麦もいいよね。うーん、うどんもいいよね。最近美味しいうどん屋さんできたみたいだし。あぁ、決められないなぁ。うーん、Cさんは何がいい?」
このような具合にAさんは延々と迷い続け、ほかの人に聞いたりします。
BさんはAさんの決定を待っているうちにイライラしてきて、心の中で「Aさんは優柔不断な上司だ」とネガティブなラベルを貼ってしまいました。
でも、はたしてそれは事実でしょうか。
事実は決定に時間をかけているだけです。ほかの人に対して、意見を聞くなど配慮しています。事実だけを分析すると解釈は変化します。
ポジティブな視点に変えると、「優柔不断な人」という解釈が変わります。「Aさんは優しい人、思慮深い人、思いやりのある人」とも言えるのです。
このように、意図的にネガティブワードをポジティブワードに変えてしまうことを「言葉のリフレーミング」と言います。