Z世代に「普通の感覚」は通用しない
僕がZ世代の若者にインタビュー調査をする中で感じたのは、彼らがすぐ「ブラック」「パワハラ」と口にすることです。特に休んだ後の周囲の対応には敏感で、体調不良という理由(実際はサボりでも)で休んだことをマイナスに捉えられたと感じたら、その会社はブラック企業ということになります。
あるときは、「上司のパワハラがすごい」と言うのでどんな状況で何を言われたのか具体的に聞いてみたところ、上司が言っていることはごく普通で、ただ本人の主張ややりたいことが通らなかっただけでした。普通に考えれば、まだ経験値のない新人の提案がそのまま通ることはあまりないでしょう。
しかし、Z世代には通るのが当たり前だと思っている子も少なくありません。人数が少ないこともあり、若い人材をほしがっている企業では、面接で「あなたの思い通りに活躍できますよ」と言ってしまっている場合もあります。だから、意見が通らないと「話が違う」と感じてしまうわけです。
大学での授業でも、こうしたZ世代の感覚に悩まされることがあります。例えば、ある学生が課題を提出してきたときのことです。内容が的外れだったので、僕は課題の意図はこうで、提出物はどこがどうずれているか、長々と説明を書いてメールを送りました。
Z世代を大人の考えに染め上げるのは難しい
するとその学生から、「ダメな部分を説明するのではなく、何を書けばいいのかを教えるべき」という怒りの返事がきたのです。思わず膝から崩れ落ちました。僕としては、説明をもとに自分で答えを考えてほしかったのですが、そうではなく答えを教えてくれというわけです。教育って難しいなとつくづく感じた出来事でした。
Z世代の上司に当たる方々も、彼らにどう接したらいいのかと悩むことが多いと思います。ただ、若者というのは昔から未熟で視野が狭いものでした。皆さんにも、新人の頃「自分は悪くない、わからず屋の上司が悪い」と愚痴っていた時期があるのではないでしょうか。それを先輩や親に諭されながら、経験談を聞きながら、だんだんと社会になじんでいったのではと思います。
ところが、今はSNS上でいくらでも愚痴ることができますし、バズれば同世代から無限と言っていいほどの共感を得ることもできます。こうした経験を持つ若者を、「社会は甘くないものだ」という大人の考え方に染め上げるのはもはや無理でしょう。
Z世代と僕たちでは、考え方も感じ方も大きく違うのです。この世代を部下に持つ方々は、こうした違いを前提とした上で、「正す」のではなく「共感する」スタンスで接することが大事だと思います。