学力低下、生きづらさ…最悪の場合はドロップアウト

このようにしてみると、子供たちの国語力が、学力の低下に留まらず、生活の中の生きづらさに直結することがわかるだろう。逆に言えば、国語力を身につければ、子供たちは生きる力を飛躍的に伸ばすことができる。

今の日本では、社会の分断や経済格差と言った問題によって、子供たちを取り巻く家庭格差が著しい。

親がきちんと国語力の大切さに気付いている場合は、絵本の読み聞かせや、問い掛けによってその力を育てようとする。そして子供たちが手に入れた言葉をより豊かにさせるために、自然と触れ合う機会をつくる、美術館へ足を運ぶ、社会問題を話し合うといったことを積極的に行う。

図表1を見れば、それが子供の学力にもどれだけ役に立っているかがわかるだろう。そして、こういう子供たちはグローバル化、情報化が進んだ未来の複雑な社会を生き抜いていける。

ルポ 誰が国語力を殺すのか』(文藝春秋)より

他方、そうでない場合は、子供たちの国語力は頼りないものにならざるをえない。そんな子供たちが成人し、複雑な多文化共生社会の中で高度なコミュニケーションを求められればどうなるか。それについていけず、ドロップアウトするのは火を見るより明らかだ。

子供の国語力は親の工夫次第で伸ばせる

子供に国語力をつけさせるのは、学校をはじめとした国の役割だという意見もあるだろう。だが、子供たちの基盤としての国語力は、学校より、家庭のあり方によって大きく左右される。

石井光太『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(文藝春秋)

未来を子供たちが生き抜くための国語力を、どのようにつければいいのか。詳しくは拙著『ルポ 誰が国語力を殺すのか』を読んでいただきたい。ただ、ここで言えるのは、家庭の工夫次第では、かならずしも経済格差に関係なく、子供の国語力を育てられるということだ。

残念ながら、学習塾での勉強や、進学する学校に関しては、家庭の経済力の影響が大きい。だが、子供の国語力は親の意識と工夫一つで、経済力に関係なく成長させることができる。子供が確かな国語力をつければ、自ずと学力やコミュニケーション能力を成長させていくことができる。

先の読めない複雑な未来を生きる子供たちにこそ、親は十分な国語力を与えて欲しいと思う。

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