理想的な親子関係とはどんなものか。昭和女子大学総長の坂東眞理子さんは「母親は働いていても完璧に子育てしないといけない、親の介護は子どもが責任を持たなくてはいけない、というのは思い込みにすぎない」という――。

※本稿は、坂東眞理子『思い込みにとらわれない生き方』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。

ラップトップを開き子どもを抱いて悩んでいる母
写真=iStock.com/svetikd
※写真はイメージです

仕事も子育てもこなす母親を襲う罪悪感

最近、「マミーギルト」という言葉を見たり聞いたりすることがあります。マミーギルトとは、「自分は母親なのに仕事をしていて、十分子どもの世話をしていないから、良い母親ではない」と子どもや家族に罪悪感を抱き、自分を責めてしまう感情のことです。

仕事も子育ても精一杯しているのに、なぜか罪悪感がある……。これもまさにアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)の一つといえるでしょう。しかし、これは今に始まったことではありません。コロナ禍以前から、「母親が働いているからといって、子どもが不利になってはいけない」「子どもが理想通りに育っていないのは、私が仕事をしているからかしら」と思い悩む人はたくさんいました。

さらに悪いことに母親自身がそう思い込んでいるだけでなく、「あそこのお母さんは働いているから、子どものしつけがちゃんとできていないよね」「○○ちゃんのお母さんはいつも忙しそうで、子どもがかわいそうよね」という、周りの思い込みが反映している場合もあります。

マミーギルトを感じている母親はそういった批判に反発することができず、「そうだ、私は働いていても子どもに迷惑をかけてはいけない」「母親は子ども優先であらねばならない」と自分を縛ってしまうのです。

そんなワーキングマザーたちに私はいつもこう言っています。「じゃあ、どこかに100%完全な母親はいる? あなたは60〜70点かもしれないけれど、他の人だってみんな良いところもあれば悪いところもあるのよ」と。