親も「昔とは違う」と認識する必要がある

とはいえ、親側がアンコンシャス・バイアスにとらわれている場合もあります。すなわち「親孝行な子なら、自分の世話を最後までとことんやってくれるはずだ」という思い込みです。さらには施設に入るのを「子どもから見捨てられて施設に入れられた」と思う親もいるでしょう。

しかし、そういった親子間のアンコンシャス・バイアスは変えていく時期に入っています。現在は昔と比べて親子を取り巻く環境が大きく変わっているからです。子どもが多数いたり、無職のお嫁さんが介護をしてくれたり、といった社会ではありませんし、ましてや少子化で、子どもがいても1〜2人。

もしその子どもが結婚していた場合、パートナーである妻や夫だってそれぞれの事情で忙しく、義父や義母のケアをするのは難しい。また離れて住んでいるからなかなか介護できる距離ではない、という親子も多いでしょう。だからこそ、「昔の家族形態とは違う」ということを親側もしっかり認識する必要があります。

坂東眞理子『思い込みにとらわれない生き方』(ポプラ社)
坂東眞理子『思い込みにとらわれない生き方』(ポプラ社)

では、お互いがつらくならないために、どうすれば良いのでしょうか。その一番の解決策は、親と「介護を必要とするときになったらどうするか」という話を日頃からしておくことです。

もし兄弟姉妹がいたら、一緒に親の介護について話し合っておくのもいいでしょう。なかなかそういう話をする機会がないかもしれませんが、いざ介護が必要になってから「こんなことを期待されても無理だよ」という事態にならないよう、親の思い、子どもの思いをお互いが知っておくことが大切です。

「あそこのおばあさんはとても良い施設に入って、娘さんが毎日訪問してきて、とても幸せそうだよ」など、そういった情報をメールや電話で共有するだけでも、親が将来のことをどう考えているのか聞き出せるかもしれません。そして親側も、「子どもに依存せず、自立した生き方を自分で選ぶ」という気持ちをきちんと持つことが大事です。

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